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「神子様、本日の朝食でございます。」
「ありがとう。わ!これ私好きなの、嬉しい。」

小鉢にぽつりと数個乗る野苺の砂糖漬けに、***は笑みを零して喜ぶ
砂糖など高級品なのだが、***の機嫌を取りたい里の人たちは、以前より豊かになった蓄えを集めて甘味を***に献上するのだ

「神子様、本日は南の畑をお願いいたします。」
「種はあるの?」
「はい!」

なら頑張るねと給仕係の子の頭を撫でれば、きらきらと目を輝かせて神子様!と笑う
***はもう神子様という呼び名を訂正していない。別に、何でもよくなってしまったのだ

食事を終えて南にある畑へ足を運んだ***は、下準備(耕したりなど)が済んでいる畑に立ち、何のご用でしょうかと顔だけ振り向く

「君が神子様?」
「そう呼ばれてはいます。」

見知らぬ忍び装束の男から目をそらし、***は杖でトン。と土をついて呪文を呟いた
ぱぁあと紫の光を伴いたわわに実る野菜に***は満足げに頷き、甘いもの食べて機嫌がいいから用件言ってと改めて振り返る

「・・・怪我を治すなら状態を診せてもらわないと。」
「これは何年も前のものだから今更どうでもいいよ。用件は、神子様に一緒に来て」
「嫌です。」

話を聞き終える前にきっぱりと言い切った***は、私この里から出ませんと乾燥気味の地面を歩いて他の畑の様子を見に行こうとするが
腕を掴まれ、足を止められてしまった

「離し」
「殿の命だからはいわかりましたとは言えないんだよね。」

ハルハール。と熱呪文を呟き間に炎を走らせた***は、緩んだ手からすり抜け杖を手に飛ぶ
キンっとボルグ(防御壁)に弾かれた刃物にやる気かと空中に止まりシャラール(水魔法)と唱えた

「私、自分を攻撃するゴイには容赦しないの。」

水を巨大な氷柱のように凍らせた***はくいっと杖を不審者に向ける
ぎらりと光る氷柱が一斉に不審者に降り注いだ

「やっかいな技だね。」
「っ!?」

一瞬で背後に現れた不審者に動揺しつつ音魔法で微細振動を起こした杖先に力魔法を併せて、つい先日観た学生の技を真似させてもらう

「ッ!」
「ボルグの貼れないゴイに上級魔導士が負けるわけにはいかない!」

出力を上げれば不審者の持つ棒手裏剣は弾かれ、掠った袖は散り散りに落ちていく
シュタッと民家の屋根に着地する不審者にふんと鼻を鳴らして、***は出直しなと地面に降り立った
これ以上やるとゴイ(非魔法族)虐めになると思ってのことだが、それは間違い

「甘いねぇ。」
「なっ・・・!」

背後に移った気配に振り向き様、***の首に手刀が落とされた