8 

「白、ちゃんと食べないとだよ。」

「伊賀崎くん、ジュンコちゃんにこのご飯はどう?栄養あるからきっともっともっと綺麗になれるよ。」

「先輩、稽古つけて下さい!」


「竹谷くん、あの、」


どうして、なんで、
俺が何したっていうんだ。確かに去年まで関わりなかったけど、それは孫兵だって同じだろ?
俺だけに笑わなくて、俺だけに小さな声で、俺だけに目を合わせない

なあ、その褐色の肌に興味があるんだ
その綺麗な目で覗かれてみたいんだ
純粋な笑みを向けられてみたい、強いって噂だから手合わせ願いたい
折角同室なのに、なんもない。せめて、ちゃんと部屋で過ごしてくれりゃまだやりようあんのに、部屋にもいない

「なあ!いつもどこ行ってんだよ!!」
「っ、ご、ごめん、」
「なんで謝んだよ、俺、***と仲良くなりたいんだ!」

ぱっと、はじめて***の目に俺が映る
嬉しくて、早くなる鼓動に従って言葉を次々に口にする
気づけば睦言のようになっていて、恥ずかしくて顔を赤くした俺に、***はつぅと涙を頬に滑らせた

「***、泣い」
「いやだっ、」

えっ、と固まった俺は、もう苦しいのはいやだと首を横に振る***に何もいえず
ごめんなさいと謝り続ける***がいつの間にかいなくなって、三郎たちが俺を訪ねてくるまで一歩も動けなかった

それから数日して、珍しく委員会中に先輩と二人きりになって、柔らかく、ダメージを浮けていた俺の心に圧力をかけてきた
別に脅されたわけじゃない。ただ、***に拒絶された傷が癒えてなかっただけ

「どうしたんだ八左、」
「どうしたの?ハチ。」
「八左ヱ門が泣くなんてよっぽどでしょ。話聞くよ。」

優しい友達に、俺は溜めていたことを全部全部吐き出した

***と仲良くなりたいのに拒絶されたこと
半年以上頑張ってきたのに、何にも実らなかったこと
虐められてるわけじゃないけど、委員会に居づらいこと
先輩たちは***をすごく可愛がって、なんでも***優先にすること
俺だって先輩に甘えたいし、色々教えてほしいこと
先輩に、***と仲良くしてほしいと、俺に頑張れといってきたこと

全部全部、嫌になって吐き出す

「俺、もういやだっ・・・!!俺頑張ってんのに、誰もわかってくんない!俺っ、俺、***と同室いやだ!」



それから二日後の、三組合同演習で
三郎と組んだ***が、川で溺れて意識不明になったと知らされた