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葉音が大きすぎて、木に触れたくない
土は靴跡が残るから踏みたくない
道の選択肢は少なく、ほぼ無音で瓦の上を走る

但し、いつもより緩やかに

(音が鳴りやすい。)

状況の把握や空間認識は得意だ
だから、現実は納得いかないが受け入れられる
矛盾しているようだけど、適応できればそれでいい

試しに、少し立ち止まってみた

そよそよと、心地良い風が頬をなでる

(・・・平和な世界、)

気配が多すぎて休まらないが、賑やかなので隠れるには向いていそうだ

「ぅわ!」

一瞬。ひゅっと息を吸う音に反応した体が、音へ向き視界に少年を捉え
穴に落ちる少年を確認する

「・・・」

自分のいた世界なら確実に即死であろう間抜けさに思わず沈黙
そのまま無視して走り出した

ここには死にたがりが沢山いるように感じたが、それはやはり世界の違いで
でも、皆あまりに気配を探るに下手な人ばかりでそんなでいいのか不安になる

ザックザックと地面を掘る横で、ザックザックと地面を掘り進む人
ガキンと武器をぶつからせて戦う目つきの悪い人たち
虫編み片手に注意深く茂みを探る人たち
壷を持った人に石に縄をくくったような玉をみせながら話す人
ぜーはーしながら座っている十人余りの人たちに何かを教える人
的に向かって輪を投げる人や筒に頬ずりする人
女子に追いかけられてる人に同じ顔で全く違う笑い方をする人たち
紙の整理をする横で文字をすらすら書いてる人
縄を手に怒りながら誰かを捜す人の一つとなりの道でよそ見をしていた人になにやら叫んで一直線に走っていた人がぶつかる

なんて賑やかで、そして見慣れない世界
誰もが表情豊かで、誰もが自分に気づかない

平和な世界に、異物がぽつり

(・・・帰りたい。)