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「えっと、ここを右。で、一つ・・・二つ・・・三つ。あった。」

覚えた地図を脳内で広げ、なんとか自室に辿り着いた***は
戸を開けて直ぐに、自分を呼ぶ声にびくっとはねた

「***!やぁっと会えた!」
「え、え、」
「面会謝絶で退院日まで内緒なんだもん。兵助心配しすぎて豆腐も喉通らなかったんだから、心配させてごめんって謝りなよ?」

女か!と言いたくなる髪の長さが当たり前だと聞いたし、伊作も長かった
そのためそこは気にしなかったのだが、態度でどうやら親しい友人だと思われる相手に対応が堅くなる

「う、うん、後で謝っておく。ごめん、ここまで歩いただけでも疲れて・・・少し休む。ごめん。」
「えっ、兵助に会いに行かないの?」

心底驚いたような、あり得ないとばかりの顔
ぎくりとしつつ、言い訳を口にしようとして遮られる

「***・・・!」

いつの間に現れたのか、後ろから腕を掴まれ振り向かされた

そこには、忘れるはずもないイカレタ女と同じ顔が

「っ、なん、で、」
「***?」

ガタガタと震える体で離れた***は、黙って首を横に振る

「さ、わるな、」
「っ、***、」
「やめろ!!」

のばされた手を叩き落とし、叫ぶ

「***どうしたのだっ?」
「うるさいっ、いいから、僕に近付くな・・・!」

死にたくない。と冷えていく頭
震えた体で自分を守るように抱きしめる

「***どうした?兵助、なにかした?」
「してないのだ、」
「聞いてないっ、こ、んな、こんな、僕っ・・・!」
「***・・・?」
「僕の名前を呼ぶなッ!!」

殺される殺される殺される殺される殺される殺される

いやだ、死にたくない

「僕に近づくな!!!」


驚愕に見開かれた眼
そしてうっすらと滲む涙

どちらにも、恐怖心しか沸かなかった