3 
「お、そいつまで懐いたか。」
「!あ、先輩!」

お疲れ様ですと微笑みながら檻から出てきた可愛い後輩の頭を、優しく撫でてやる
そして綻んだ顔に今日は大丈夫だなと安心した

辛いことがあると、笑みがぎこちなくなるのだ

「あれ、兄さんがまた後輩に嫌らしい手つきで触ってるぞ。」
「弟よ、いつかその舌俺に引っこ抜かれるからな。」
「オレが喋れなくなったら***ぼっちになるけど。」
「***、あいつの真似はするなよ。」
「兄さん真似すると幼児趣味になるぞ。」
「口が減らないな。」
「え?聞こえない。」
「またやってるんですか?ほら、***おいで。」

はい?と耳に手をあててわざとらしく身を乗り出す弟に無言で千本を取り出せば
弟も弟で、真顔で猫手を装着する
そこへ、俺が就活で来れなくなった委員会の委員長代理である後輩が
殺気を放つ俺ら兄弟の間できょろきょろと不安がっていた***を抱き上げ、見習うなら私を見習うといい。とにこりと笑った

「先輩方は、本当に仲がいいんですね。」
「兄弟だしな。」
「いいから兄さん、ちょっと手合わせお願い。」
「わかったわかった。***を頼むな。」
「了解しました。***、虫たちに餌をやろう。」


***には、大切な親友がいる。らしい
悲しいかな、向こうはそう思っていないみたいだが

俺が委員長を務める生物委員会は中々にして人を選ぶ
委員長の俺は六年い組、代理が五年い組、弟が三年い組で、***が一年い組
四人中四人がい組で、俺がいうのも何だが皆顔も頭も腕も申し分ない
申し分ない。が、性格で難ありのため慣れるまでに時間がかかる

「凄いな、百点満点じゃないか。」
「あ、ありがとう!ですが、これは先輩方が勉強を教えてくださったからで、僕の実力ではありません。」
「いや。***の実力だ。」

ぴしゃり。断言してやれば、戸惑いつつも改めてありがとうございますと笑う
その姿はどこからどうみても幼いこどもだが、違うということは生物委員会では周知の事実だ

「青(せい)!」

ばう!という声と、***の笑い声
駄目じゃないか。と後輩が引き剥がそうとしている若い狼は、今日は何するの?としっぽをパタパタ
かわいい。といいながらぎゅっと青を抱きしめる***の姿に、すぐに後輩は溜め息混じりで腕を組む

愛しい奴らだ。

「超集中してない兄さんに負けるとか!」
「最上級生だからな。」

「でた、変人集団。」
「おい!」

ぴくり。一番に反応したのは***だ

「本当のことだろ。外れ者を好んで受け入れてんだ。」

まあ、体が反応したのは普段は冷静で頼る後輩だがな

あいつら、終わったな。

「もう一度言ってみろ。」

俗に言う、キレたら怖いタイプ

顔面凹殴りにされようが親の形見砕かれようが怒りを隠してきれいに笑う後輩は
過去より未来に対して怒りを露わにする

この頼れる後輩は、小さき優秀で、そして純粋な者のためなら
直感を信じ、初対面ならまだしも対面すらしたことのない通行人ですら庇う

「ッゴホ、げほっ、」

瞬殺で地に伏せ嘔吐する四年生の背中を踏みつけながら、懐刀を引き抜き振り下ろした

「シネ。」

ひどく冷たい目で見下しながら

「せんぱいっ!」

びたり。絡繰りのように止まった後輩に、今一番愛しい小さき後輩が抱きつき
人間同士の諍いは見たくないのだと苦しそうに発する

「・・・すまない。我を忘れた。」

いや、寧ろ冷静に始末する気だったな

逆に、うちの弟は我をすれて現実的すぎる抹殺計画を立てている

「命拾いしたな○○○。」
「・・・?」
「***が覚えたらどうするんだ。」
「***はやっぱりオレを見習うべきだ。ってことで・・・覚えておけよ。」

可哀相に。同輩の殺気にあてられて、アワアワしてる
これは、俺の出る幕はない感じだ

「さあ。」

パン。と手をたたけば、二人ははっとして***に笑みを向け
俺は倒れている二人をしっしと追い払った