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「さっきはごめんね、***が一人部屋だって知らなかったんだ。」
「いえ、僕も知らなかったので・・・善法寺さんは同室の方がいらっしゃるんですか?」
「うん。食満留三郎といってね、用具委員会委員長をやってる面倒見のいいやつなんだ。それと、***は僕を伊作先輩と呼んでいたよ。留三郎のことは留三郎先輩。わからないときは先輩だけでいいと思う。」

着物の着方や髪の結い方を学んで、僕は必死に、生きるための情報を吸収しようと努力する

「***が記憶喪失だと知っているのは学園長先生をはじめ先生方全員。生徒では僕だけ。」
「他の人には言わなくていいんですか?」
「自分で必要だと思ったら言うといい。初めから言ってしまうと、思い出させようと躍起になる人がでると思うんだ。そういうのって前の***だと嫌がって逆効果になりそうな事だから・・・どうかな?」

確かに嫌だ。と頷けば、本質は変わってないかもね。と笑われた

相手は年下なのに、ずいぶんしっかりしてて大人びてる
少し恥ずかしいな。と苦笑して、疲れたので寝ます。と薄い布団に潜った


なぜか、泣きなくなった


朝はいつもなら有り得ない、朝日と共に起床を達成
体内時計と生活リズムはこっちの僕のものらしい

そういえば、僕はこっちの僕と融合でもしたのか?

「いてっ、」

ズキンと、頭が痛む
ザァザァと雨のように、こっちの僕の最期が落ちてきた


『・・・あーあ、』

夜、あの森の中で一人倒れて
ドクドクと出血する腹部を押さえて泣いてる

『ごめん、帰れない・・・や、約束、破っ、』

こっちまで悲しくなる声
恋人でもいたのか?生きたいって、泣いてる

『僕の、なんでも・・・あげる、から、だから、僕を生きさせ、て、』


「***!!」
「ッ!」

パン!と目の前で手が叩かれた音で意識が戻った
汗だくで、ひんやりしてるのが自分でもよくわかる

心配そうな伊作先輩にトリップしてたみたいです、と苦笑して
食べれる?と差し出されたお粥を口に運ぶ

「傷は脇腹にある裂傷が一番重傷なんだ。とりあえず七日は入院。記憶のことがあるから面会は禁止にして、保健委員は僕以外を当番から外した。だから、七日のうちに当たり前のことを覚えてね。」
「何から何までありがとうございます。」

火のつけかたとか水の組み方とか、ね?と癒し笑顔を向けられて、つられて笑った


七日。
日常生活に必要な大体に追加して、人の呼び方をざっくり教わった

「六年は名前に先輩。五年は呼び捨てだったはず。四年以下はなんだったかな・・・ごめんね、僕留さん伝てにしか聞いたことなかったからよく知らないんだ・・・」
「いえ!ありがたいです。」

あと勉強も教わった
バカでも天才でもない僕は必死だけど、教われば教わるほど何じゃこりゃ。という科目

忍術って、普通にやったら人間性疑われるものだよな

「僕大丈夫かな・・・」
「無理そうなら、早めに相談すること。わかった?」
「はい。」


そして、僕は不安しなかい日常生活へ足を踏み出した