「きり丸!すまなかった!!」
なにやら寸劇がはじまったようだと、***は宙に座りながら光景を眺める
特に、気に障ることがなければ放置しておくに限るのだ
「や、めてください、おれは、戻りません。」
しかし地上は瘴気が薄くて息苦しいなと、ヒートアップしてきた寸劇に意識を向け
向かってきたきり丸に首を傾げた
「おれは、***さんの奴隷になったんです!」
強制参加の寸劇か。ときり丸に縋る面々をみれば、奴隷という言葉に反応した男性がチョークを投げつけてくる
それを、とくにリアクションをせず受け、話が終わったなら行くぞ。ときり丸の手を引けば
待て!と引き留められた
「きり丸を奴隷になどさせない!」
「それは貴殿が決めることではない。ただ、返してほしいのなら勝負といこう。」
私は今機嫌がいいからな。と、拒食の工兵隊(イビルカーペンター)と呟く
すると、地面からズルルと這い出てくるなり損ないの人型がきり丸の寸劇相手一人一人に向かう
「私も折角見つけた奴隷を手放す気はないが、私とではアンフェアだ。」
「あ、あれ、なんすか?」
「知ってどうする。」
使うわけではないのだから気にするなと、小さい順から順調に敗北していくのみる
ヒュッと、縄のついた刃物が顔面へ
「くだらん。」
ふぅっとひと息。刃物がグズグズの錆くずへ変化した
相手は驚きを隠せずにいる
「後ろが危ないぞ。」
忠告とほぼ同時に、縄が導火線のごとく燃えて消えた
けれど、それより背後にいた工兵隊に殴られるのが問題だ
「中在家先輩っ、」
「知り合いか。」
びくりと震えたきり丸が、数拍の後、首を横に振る
工兵隊にやられ崩れていく人間たちに、うむ。と考え、***は笑った
「私の勝ちだな。」
この中で年長者は貴殿か。と、騒ぎを聞きつけ集まっていた野次馬の中から学園長を探し出す
「二度と私の奴隷に干渉しないと、誓え。」
誓わねば、わかるな?とぞわりと魔力を滲ませ幻覚を見せつければ
顔を青くした学園長が肯いたのを確認し
きり丸。と振り返った
「は、い!」
「小腹がすいた。次へ行くぞ。」
「ま、て!!」
ぐぐぐっと起き上がった男性にほう。と頷き、顔だけ向ける
「名は?」
「土井半助っ、きり丸の保護者だ!」
きり丸は渡さないと満身創痍で意気込む土井にくだらん。と一言
そんなにきり丸といたければ、永遠にその目に宿していればいいと
魔力のみで場に重圧をかけ、息すらできなくさせたうえで
「卑焼け線照射器(イビルロウビーム)。」
土井の頭をつかみ、呟いた
「ぅ、あ、ああああ!!!」
「土井先生っ、」
流石のきり丸も気になるのか、なにしたんすか!?と***に叫び
それを冷めた目でみながら、網膜にきり丸を焼き付けただけだ。とうっすらと笑う
「きり丸が殺される場面を、永遠にな。」
これであの男も寂しくなくなるだろう。いいことをした。と清々しく笑い、行くぞ。ときり丸を担ぎ上げて
「ではいずれまた会う日まで、精々食糧を蓄えておけ。」
そう言い残し、消えた