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「どうしよう、」

雪兎を手に途方にくれる子供は、キョロキョロウロウロと落ち着かない
どうやら、山から出られなくなってしまったらしく

目を真っ赤にして涙声のまま、どうしようどうしようとさまよい歩き

「あっ、」

ずっ、と足元が滑り、浮遊感ののちに衝撃
その際に自分の両足にはしった痛みや奇形に、子供は声を上げて泣き出してしまう

「こわいよお母、助けてお父、いたいよばあば、かえりたいよじいじ、うわぁーん!!」

いくら泣いたって助けはなく、子供は寒さに体を冷やし
うつらうつらと、目を閉じた


ザクザクと子供に近寄る影にも気付かずに、子供は寝むる

「人の、子?」

冷え切った子供の体をペタペタと触り、影はよいしょと子供を抱き上げた

「助けてあげる、から。」

ザクザクとまた雪を鳴らし、影は急ぐ

向かった先は、掘っ建て小屋のように隙間風が通り抜ける住処で
すぐに子供をおろした影は、炉にかかる鍋に野菜や肉を切り取り入れていく

ぐつぐつと煮立つ鍋の中に味噌を落としたのと同じに、子供が目を覚ました

途端に逃げ出した影に、子供はぱちりとした目を向ける

「・・・きみ、おになの?」

こくりと頷いた影は、に、んげん?だよ、ね?と首を傾げた

「うん!ふわらいぞーっていうんだ。」

助けてくれてありがとうと笑った雷蔵に、鬼といわれた影は笑う

「おともだちになろうよ!」
「!で、でも、鬼・・・だよ?」
「鬼はいいものだって、お父もお母も、むらのひとみんなしってるよ!」

ふわりと笑う雷蔵に、鬼の子もつられて笑いました

「じゃ、じゃあ、よろしくね。えっと、***っていうんだ。」
「***だね!」

ともだちできた!と嬉しそうにする雷蔵に、***は遠慮がちに近づく

「雷蔵、」
「なぁに?」
「ずっと、友達でいてくれる?」
「もちろんだよ!」