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襖越しでもわかる。なんと濃厚な匂いか
ちょうど能力もきれたところで、部屋へ入った

中には、人間の雄が四匹と雌が一匹

「何者だ!!」
「天女様をお守りしろ!」
「きり丸!お前が連れてきたのか!?」
「黙れ。」

キャンキャン喧しい人間に一言。大人しくなったところで、雌に視線を固定
ふむ・・・雌から漂うそれは妬みや嫉み


自分だけが愛されるべき
自分以外が愛されるのが許せない


「強欲で理不尽で・・・悪くない。それでは。・・・いただきます。」
「きゃっ!!?」


ばくりと一口で、口の中で濃厚に香る
量もそれなりだ・・・


「・・・お、れたち、」

雄の一匹が何か言ってるが、興味はない
屋敷を覆っていたそれは消えたのだから。どうやら、雌が根源だったらしいな

さて。きり丸はこの雌に消えてほしいと言っていたな・・・

「さぁきり丸。私は喰ったぞ。」
「っ、あ、ありがとう、ございます。」

呆気なかったからか、呆然としているきり丸を小突けば
はっとしたきり丸にニヤリと笑う

「あとは、貴殿が天女とやらを追い出すがいい。」
「えっ、で、でも、」
「なに、少し・・・微笑んでやればよい。」

孔雀色の絵の具(イビルコクーン)をきり丸の背中にひと塗り
雌の絶叫が響き渡る

「な、なにが起こってるんすか!?」
「簡単に言えば、そうだな・・・癒し系オーラを放っているだけだ。」
「卑し系おーら?」

近づけ。と背中を押せば、よろ、と雌に近づいたきり丸が雌をみて
見られた雌がこの世の終わりをみたかのように逃げ出した

「追え。」
「追う、って、」
「追え。」

追うよな?とにこりと笑うと、きり丸は顔をひきつらせて雌を追う
それを魔界の凝視虫(イビルフライデー)につけさせた


一気に騒がしくなった屋敷を散策するように歩いてきり丸の帰りを待つ

あちらこちらで騒がしくなる人間共は、どうやらきり丸を探しているらしい

「***さんっ、」
「おお、帰ったか。」

息をきらしながら戻ってきたきり丸にあの雌はどうなったか問い
山の中に消えていったという回答に、頷いた

「願いは聞き届けたということだな?」
「はい、」
「くくくっ、そうか。ならば、晴れて貴殿は私の奴隷と成ったわけだ。」

「きり丸!」

請うような声に、きり丸の顔色がさっと青くなった