「土井、せ、んせ、」
叩かれた頬がじんじん痛んで、口の中は切れて血の味
じゃり、と近づいてくる土井先生は、おれを憎らしげに見てる
いやだ、怖い、
なんで、誰も助けてくれないんだっ・・・!
周りにいるは組の皆は、当たり前だとばかりに見てるだけ
「天女様に謝りなさい。」
「っ、嫌です!おれ悪くないじゃないっすか!!」
「はぁ・・・」
頭を抱えた土井先生は、抵抗するおれを縛り上げると
あの女のとこへ連れてって、無理矢理土下座させられた
あの女・・・ふた月ほど前に空からふってきた、自称天女様とかいう奴
自称天女様がきてから、皆おかしくなったのに
誰も何も気づかないで、皆して天女様天女様って
蛸壺も塹壕もなくなった学園
地獄の会計委員長と戦う用具委員長の喧嘩がなくなった学園
授業や自主練がなくなった学園
「この時をもって、きり丸。お主を退学処分とする。」
頭が痛い、割れる、気持ち悪い、
何もできなかった自分が、情けない
「ここ、です。」
頭痛を堪えながら辿り着いた忍術学園の門を前に、どうしておれは皆を元に戻したいのか。自分に問う
まぁ、答えは見つからないけど
「ふむ・・・魔界777ッ能力、毒入り消毒液(イビルキャンセラー)。」
がぱっと口を開けた・・・ら、吐瀉物がふってきた!!汚い!
つうか顔戻ってるし!
「こ、これなんなんすか!?」
「視覚的に捉えられなくなる能力だ。音は普通に聞き取られてしまうからな、用心することだ。」
「そんなことが・・・」
おれを抱えた***さんはいつの間にかさっきの顔に戻ってて
軽々塀を乗り越えて、至極楽しそうに笑う
「で、具体的になにをしてほしい。」
「・・・天女様に、いなくなってほしい。です。」
でも、殺したいわけじゃない
・・・なら、どうしたいんだ
「答えが見つからぬか。」
「・・・今、皆が皆ドロドロした雰囲気なんす、だから、それを***さんなら消してくれる・・・かと、」
「くくっ・・・私はただ、食事をすればよいだけだな。」
「食事、」
おれが首を傾げれば、***さんは少し考えたあと
舌なめずりをしておれをちらりと横目でみた
「生物が発する憎しみや妬み、嫉みを、私は喰うのだ。」
貴殿等でいう、肉や魚のようなものだ。という***さん
本当に、というか、やっぱり、人間じゃないんだ・・・今更だけど
「さて・・・食事にいくか。」
一番強いのは・・・と歩き出した***さんの手をつかめば
危ないぞ。と払われた
するりと手袋を脱いだ手は、全部が刃物みたくなっていて
驚いて自分の手が切れてないがみたおれに、***さんは口角をあげながらつなぐか?と手を差し出してきた
慌てて首を横にふったおれに、そうか。手袋をしなおした***さんが行くぞ。と早足になる
向かう先は、天女の部屋の方
「そっちは、」
「喋るな。音をたてるな。」
もしたてたら後悔するぞ。と言った***さんの目は、竦み上がるほどに怖い
食事を邪魔さえしなければいいだけだ。との補足も、食で豹変するしんべヱから食い物を取り上げるよりやっちゃいけないと思わせた
「・・・」
天女の部屋の前までついたおれたちは、中から聞こえてくる談笑にとまる
じゅるりと、よだれの音がした