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「お呼びで・・・すよね?あれ、それなんですか?」

闇の印が熱を帯び痛みだせば、帝王がお呼びの合図
即座に姿現しで御前に参れば、周りに集まる仲間と、威風堂々おわす帝王
そして、帝王の前で拘束されたマグル

「おぉ***、待っておったぞ・・・お前、母親が日本人だったな?」
「はい。」
「こやつらは先ほど突如としてこの部屋に現れ、俺様に刃をむけた・・・愚かなマグルだ。」

二人の子供は、みたところ10かそこら
その年で姿現しができるとは。と感心も一瞬。マグルという言葉に首を傾げた

「マグルと仰いましたか?姿現しを使ったのなら」
「この部屋への姿現しができりのは俺様かお前くらいだ。」
「・・・ご用は?」

少しばかり苛立っておられるのは、今日があの日だからだ
数日前、予言で告げられた男の子を始末しに行く日

「殺せ。ただし、情報を引き出してからだ。」
「磔の呪文でも喋りませぬか?」
「言葉がわからん。」
「かしこまりましま。」

恭しくお辞儀をすれば、帝王は仲間を下がらせ、男の子を殺しに発った

残された私が杖を取り出せば、子ども達はびくりと震える
そのうち一人は尋常ではないほど震え上がり、思わず口角を吊り上げた
カツンとヒールが音をたてる

『選びなさい。この場で死ぬか、助かるか。』

ゆっくりと日本語を紡げば、一人がその震える唇で声をだした

『あ、あなたは、敵ですか?』
『質問に答えてる時間はない。助かりたいのなか、一刻もはやくここを発たねばならないの。』
『た、助かりたい!』
『ならば手をとれ。』

ぱっと縄を消してやれば、二人は迷わず差し出した手をつかんだ
その手を握り返し、引き寄せ抱きしめた

ぐるりと歪んでまわる世界に、次にあらわれたのは見慣れた自宅だった

『きもちわるい・・・』
『だろうな。さて、行くよ。
『えっ、』
『漏れ鍋にいく。』

さぁ。とフルーパウダーを差し出せば、見合わせ二人が首を傾げた

『暖炉にはいり、粉を下に落としながら漏れ鍋と言いな。』
『言わなかったらどうなる。』
『さっきみたいなとこにいくか、他人様の家にいくか。』

やっとしゃべった一人にそっけなく返せば、もう一人が恐る恐る粉をつかみ暖炉にはいった

『漏れ鍋っ、』

ごぅっと燃え上がった緑の炎に、残った一人がつかみかかってくるも
壁に叩きつけ喉元に杖を押し当てた

『雷蔵にっ、なにをした!』
『つべこべいわず、黙って従え。』
『っ!』

どん!と暖炉のなかへ子どもを放り込み、粉を差し出せば
今にも泣き出しそうな、恨みがましい目で睨まれる

強い子どもだ。

『漏れ鍋!』

再び燃え上がった緑の炎は跡形もなく子どもを消し、私もあとに続いた