ネタ→鬼の子 
約束を破られた子と、約束を破った子のお話


お相手→不破雷蔵・・・多分


忍術学園に入る前、村の外れの森の中に親友がいました

黒髪に、褐色の肌、人並み外れた力、強靭な肉体、それに劣らぬ身体能力。
親友は、鬼の子です。


雪のふる、日中だというのに灰色の空で薄暗いその日
雷蔵くんは森で迷子になり、崖から落ち、両足を折るという惨事に見舞われる
「怖いよお母、助けてお父、痛いよばあば、帰りたいよじいじ、うわーん!!」
6つになったばかりの雷蔵くんは、ただ泣くしかありません。だって、どうしたらいいかなんてわからない

夜になり、また雪がふる。
寒くて痛くて冷たくて熱いのを全部通り越して、ただただ眠くなる。うつら、うつらと寝てしまう


パチパチ、火の音だ
グツグツ、何か煮えてる
ザクザク、何か切ってる
トントン、何か刻んでる
バラバラ、何か落ちた?

寒くない、温かい。

「ぅわっ、」
「・・・?」

パチリと目を開ければ、起きたのに気付いた誰かが声をあげ、逃げてしまった
開け放たれた扉から雪が入り込んで、ほったて小屋は隙間風で冷やされていく
それでも、眠る前よりうんと温かい

「あのっ、」

ひょこり。外から中を伺うのは、同じ年くらいの子供。なぜか、角がある

「・・・きみ、おになの?」
「(ビクッ)」

村に伝わる、お話。
村人が森で迷子になると、そっと助けてくれる鬼がいる
敵が攻め込んでくると、守ってくれる鬼がいる
飢餓に陥れば、知らぬ間に食物を届けてくれる鬼がいる

「に、んげん、」

だよね?と首を傾げる鬼の子に、雷蔵はくんうん。きみはおにのこ?と同じように首を傾げる
そうだよ。もう痛くない?と離れて伺う鬼の子と雷蔵くんは、その日から友達に


雷蔵くん、ぼくとずっと友達でいてくれる?
もちろんだよ!


今まで鬼には助けられてきたからと、村人の好意で忍術学園に入った鬼の子は、雷蔵くんと手を繋ぎ、仲良く門をくぐりました

雷蔵くんはろ組、鬼の子はは組。

寂しいけれど、友達だから大丈夫。

「あ、雷蔵くん、あのね」

角を隠せるようになった鬼の子は、見た目普通の子供
けれど、上手く制御できない力で、鬼の子は浮いていました。雷蔵くんは、保身で、笑顔を向けてくれた鬼の子を無視

「雷蔵、く・・・ん?」

するりと通り過ぎていった雷蔵くんに、涙がぽろぽろ。鬼の子の初めての涙は、誰にも拭われず地面にシミをつくるだけ


生物委員に入った鬼の子は、ちょっと力加減をミスしても離れてかない先輩に至極懐き
それをみた雷蔵くんは、鬼の子の笑顔に胸が痛むのを無視して、友達を沢山作りました
特に、同室の鉢屋三郎くんと仲が良く、彼の悪戯や顔を借りられるというのも、甘受します。だって、親友が居なくなって、寂しい


雷蔵くんは、
二年になり、竹谷八左ヱ門と仲良くなります。
三年になり、尾浜勘右衛門と。
四年になり、久々知兵助と。


鬼の子は、
三年になり、新しく生物委員となったろ組の竹谷八左ヱ門と同室に
同じ生物委員だし、互いに一人部屋だし、竹谷八左ヱ門は社交的だからと、勝手なことを

笑顔の竹谷に先輩をとられたくなくて、ただでさえ、雷蔵くんをとられたのに
寂しいと泣いて狼に抱きついて檻の中で一緒に眠る。そんな姿を知っていた先輩は、鬼の子を一層可愛がります
別に、竹谷を蔑ろになんてしてません

ただ、差がわかる子供には辛い。
同室なのに、挨拶くらいで逃げる鬼の子に
委員会で、先輩たちから沢山愛される鬼の子に
竹谷は苛立ちと嫉妬を覚えて、溝が深くなり、部屋には重い空気が漂う
鬼の子は更に先輩に縋るように甘え、ある日、先輩は竹谷に「あいつと仲良くしてやれよ。」なんて、なんて、別に、最初からああじゃない
仲良くしようとしました。そう言いたいのに、先輩!と笑う鬼の子に自分がいけないのかと鬱々

仲間大好き身内贔屓万歳の鉢屋が、竹谷が傷つけられて我慢ならない
縦割り演習で鬼の子と組み、崖から突き落とし川へドボン


いなくなった鬼の子は、先生に助けられ一命を取りとめる
いくら身体能力が高くても、空は飛べないからね。

ますます先輩に懐き、甘え、悪循環


五年生になった夏、鉢屋は気づく。気づきたくなかった
雷蔵くんは鬼の子をずっと見てる。自分を甘やかすのは、代わりだ

苛々、憎らしい。

六年生とは交流がなく、実質ぼっちになった鬼の子は、鉢屋に詰め寄られぷつり。
長年溜めてた負の感情に任せて返り討ち

止めに入った竹谷も壁にめり込む勢いで蹴り飛ばす。
止めに来た六年にだって力で負けず、先生方は鬼の子がそれと知っているから、適わないとわかってる


それでも、雷蔵だけは、角がまだ隠れてるから本気じゃないって知ってる

逃げちゃダメだと自己暗示。騒乱に飛び込む
「やめて」「ダメ」と鬼の子を抱きしめて、泣く
「ごめん」「ごめんなさい」「無視してごめん」とボロボロ

ぱちりと瞬いて、泣いてる雷蔵と阿鼻叫喚なまわりにきょとん

「どうしたの?」
「ごめん、ごめんね、僕、僕自己保身のために、君を無視したんだ!ごめんっ、」

謝られてるの何で?どうして?
わけがわからなくて、でも、久しぶりの雷蔵くんの温度にじわじわ涙が

いい年してわんわん泣く二人をそのままに、先生方は事態の収拾に。



疲れた。多分ラストは鬼の子消えますよ。