「・・・てめぇか。」
「・・・来たくないのに、なんでいるの。」

優芽の周りにはジグソーパズルのピースが散在している。リヴァイが近づけばピースを踏むことなどお構いなしで警戒し、来ないでとまた壁を作った
ひたりと壁に触れたリヴァイはひんやりと冷たいそれの材質がわからず、ガラスか?とコツコツ叩く。優芽はそんなリヴァイを無視して完成しかかっているジグソーパズルの残りのピースを、どうやら複数のジグソーパズルのピースが混ざっているらしい山から探していた

「・・・なにしてやがる。」
「・・・あった。」

互いに喋りだす前には間があり、けれど疎通は優芽の方が拒否しているようだ。いや、拒絶、しているのだろう
優芽の骨と皮だけのような指が拾ったピースは、深い青をしているようだ。リヴァイは返ってこない答えの意味を一応は理解した

「・・・パズル、好きなのか。」
「・・・帰って。」

リヴァイの今の服装はパンツにシャツという寝たときのものだが、優芽の服装は黒塗りに浮くような白いワンピース。膝丈のそれから覗く足はまるでゴボウのように簡単に折れてしまいそうな異常な細さだ

「ほせぇな。」
「帰って。」
「なんの絵のパズルだ。」
「帰って。」

深い、黒に近い青から上にいくにつれ深い青、青、澄んだ青、と青色の重なる完成面に、色鮮やかな小さな点が見える。優芽の背により全体は見えないが、とても綺麗な絵だとリヴァイは壁に手をつけたまま見るために目を細めた

「言ったろ、来たくて来たんじゃねぇと。」

睨むように振り返った優芽の帰ってという言葉は、声は聞こえず口の形だけ。その目が怯えていることを見たリヴァイは、同室の奴に揺り起こされ夢から覚める

「気持ちよさそうに寝てたとこ申し訳ないんだが、そろそろ起きないとだ。」
「あぁ・・・すまねぇ。」
「疲れているんだろう、寝れるときに深く寝れるのはいいことだ。」
「・・・いや、」

疲れていない。驚くほどに、リヴァイの身体は軽かった。夢のお陰だろうかと考えたリヴァイは、確証はないが確信だけはある。唯一無二だと思っていた仲間を同時に失ってまだ半年、リヴァイの睡眠事情を考えれば現実と向き合い歩くために喜ばしいことではあった

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