※人により注意※




「おっ、お母様っ、」
「**さん?」

ばたばたばたと慌ただしく部屋から飛び出してきた**に、母は目を丸くして駆け寄ると半裸の**に貴方は目を瞑ってなさいと強めに伝蔵に告げる
慌てて目を瞑って背を向けた伝蔵は、だから耳栓筆談なのかと額に手をやりため息を吐き出した

「**さんちょっ、は、母上、」

着物を着直しながら出てきた利吉をぎろりと睨む母に臆した利吉は、誤解が生まれる前に事情説明をさせてくださいとその場で膝をつき頭を下げる
それに泣きそうになりながら崩れている着物を調えて取り乱してごめんなさいと**も頭を下げた

「一体なにがあったの?」

耳栓をとりながらの問いかけにぎゅっと唇を噛んだ**は、利吉さんがとぽつりと呟く
利吉は青を通り越して白くなる**に代わり、私が子どもがほしいと言ったのですと俯いた

「・・・まさか、すぐに出来なかったからといって責めた」
「私が**さんを咎めるわけありません。」
「では何があったのです?」
「ですから、子どもがほしいと言ったのです。」

よくわからないと首を傾げる母に、耳栓をとってもういいか?と振り向く伝蔵。まだ伝蔵が怖いのか、**は身体を強ばらせて利吉の方へ近づく
思ったほど大事でなくてよかったと安心した母とは反対に、あからさまに不信がる**に落ち込んだ伝蔵は、帰られてたのですかとはじめて自分に気づいた利吉にゆっくりと目を閉じた

「利吉さん。」
「なんだい?」
「子ども、嫌ですから。」
「確かにもう少し二人きりを満喫し」
「私は、一生、子どもなんて作りたくない。」

ぎゅっと堪えるように両手を握った**は、愛せないと首をふり断言する

「利吉さんが情に厚いのは知ってます。お母様はご主人を愛され利吉さんを愛していて、利吉さんもご主人もそうだというのを知っています。でも、私は血の繋がった家族が一番信じられない。愛せない。」

だから子どもを作りたくないと絞りだす**に一人だけでもダメかと乞う利吉は、**さん似の子なら絶対に愛くるしいと訴えかけた
育児も手伝う、頻繁に帰る。それでも首を縦にふらない**は、孫をみせてあげたいならよそで作ってきて構いませんからと吐き捨てる
それでは意味がないんだと熱くなっていく利吉と頑なな**を見比べた母は、二人でよく話し合って決めなさいと一旦落ち着かせた

「孫を見せたいんじゃない、**さんとの子どもがほしいだけなんだ。好いた人との子を、一緒に慈しみたいんだ。」
「なら、別れてください。私には無理です。利吉さんに似てたらまだわからないけど、利吉さんは私似がいいんでしょう?私は私に似てる子どもなんて愛せない。」
「っ、なら、私似で構わない。だから、」
「第一、どっち似かなんて育つまでわからないじゃない。」

デリケートな話題に、どちらの子でも整った顔の子だろうなと孫と戯れる脳内妄想へ逃げた伝蔵は、平行線ねとぱん!と手を叩いた母に目を向ける
**ははっとして青ざめ、利吉は母をみた後に顔色がと**の背を撫でた

「後悔のない選択をなさい。子を慈しみ深く育てられるかどうかなんて、私もわかりませんでしたよ。」
「私、」
「ご両親を許せないのと子を慈しめないのとは全くの別の問題だと私は思いますが、**さんはどうしたいのですか?」

本当に息子と別れる程、子どもは嫌?そう問われた**は口ごもると、殺しちゃったらどうしようと泣きながら母をみる

「最悪の事態にならないために、私がそばにいますから。息子も仕事を減らすようですし、ね?」
「はい。・・・でも、**さんが本当に嫌なら、私は二人で老後を過ごすのも良いですよ。」
「・・・考えさせてください。」


それから約一年後、**は一人ならと利吉の願いを受け入れた