歪む世界 *


※暴力暴言

※安定のキャラ崩壊




噎せかえるような血の臭いと、腐ったような肉の臭い。吐き気すら感じないほど麻痺したまま、クザンは必死に氷の欠片をかき集め卑屈っぽい笑みで両手いっぱいのキラキラ光る氷を見せた
呆れたような、蔑むような、虫けらを見るような目がゆっくりとクザンを捉え、ひくりと喉が突っ張りバラバラと欠片は床へと逆戻り。ぎゅっと噛まれた唇を力なくほどき、頭を抱えるようにぐしゃりと髪を掴んだクザンは泣き声になりかけの声を絞り出す

「ごめんっ、」
「そんな悲痛そうな顔して何を言っているんだい?君は何も痛くないだろう?」
「ごめんっ、ごめんほんとに、ごめん、」
「うん?」
「っ、こ、んな、違うんだっ、」
「何が違うんだい?」

数分前まで確かにあった右腕は、今床の上でキラキラと光る氷と成っていた
椅子に座ったままの***は随分前に失った左足を撫でながら明るく笑うだけ。それにクザンはすがり付くように土下座している

「おれはこんな結果望んじゃ・・・!!」
「あははっ、みっともない顔だねェクザン。ぼろぼろ泣いて鼻水垂れ流してさ。鏡みてきなよ見るに耐えないよ?」

ニコニコと笑顔絶やさず、それとは似つかわしくなく口から毒を吐く***は冷気に白い息を吐き出した

「ひっく、***っ、」
「ぐっちゃぐちゃで情けない顔だなァ君の汚い顔、吐き気するからいっそ削いできなよ。何、できないの?意気地がないなァ根性もないし今だって僕に嫌われないか不安で不安で仕方がないんでしょうなっさけない!」
「う、るさいっ、なんでっ!おれは必死に、」

蔑まれ蔑ろにされ時には存在ごと無視をされ、限界に達したクザンは、少しずつその憤りや苛立ち混乱を***に対して拳で訴えるよう変えられていた。***自身の手によって

「必死さが足りないよ何度目だい懲りないなァ猿でももう少し優秀だよ人間辞めれば?あはは、何その目。恨みがましそうにみちゃって、僕に文句があるならどうぞ?ほら早く何かいいなよグズ。言えないんだろう人間様の言葉は難しいものな?」
「やめろっ!」

心を蝕む罵声に耳を塞ぐのも忘れたクザンはその拳を凍らせ***の顔面を殴る
ねちょりとこびりついた何かが拳に張り付き引きずり出された。それが***の眼球だと理解した瞬間、クザンは我が身が引き裂かれたかのような悲鳴をあげて後退る

「何その悲鳴気色悪いよ?でかい図体して何気色悪い声あげているんだい?」
「あ、ちがっ、また、ま、たっ、違うんだごめん殴るつもりは」
「あーあーほら潰れちゃったよ?あはっ!君何自分の手、眺めて泣いてるの?情けない姿見せられるこっちの身にもなってみなよ。ああ無理か。君以上にみっともなくて粗雑で口より先に手がでちゃうごみはそういるもんじゃないしねェ?」
「す、すぐに医者に、」

べちゃりと落ちた眼球は完全に裂けて中からどろりと液体が垂れていた
クザンは怯えるように青ざめ、血を流しているぽっかり穴の空いた目を凝視する。嘲笑うかのような***の表情の、空洞がクザンを責める錯覚に陥った
霜焼けの酷い手がまだ機能している目を塞ぎ、切れた唇から血濡れの歯が笑うように見せられる

「まあ君の腐った姿を見なくて済むなら目なんていらないかな。もっとも君のそのみっともない轢き殺されたカエルみたいな顔は見えなくてもわかるんだけどね。心底不思議でならないんだ、君みたいな木偶の坊が役にたつはずないのに息をしている現実がさ。」

ひゅうと息を飲んだクザンは***のよく回る舌を止めたくて、忙しなく開閉する唇を閉じさせたくて、自分をわらう声を聞きたくなくて、簡単にねじ切れそうな首をつかんで床に引きずり落とした
自分を罵る***を組敷いた現実に興奮を覚えた事実は布地を押し上げる下半身で表され、***に侮蔑の笑みを浮かべさせる

「へえ、今度は犯すんだ?自分より遥かに小さな体を凍らせて肉を割って楽しそうに気持ちよくなっちゃうんだ?とんだ変態だね。真の人間のクズ。生きる価値のないごみの分際で人間社会に混じって自分に価値があるとみ誤る、情けなくて使えない廃棄物。ほら謝らないと。生まれてきてごめんなさい、息をしてごめんなさい、人間様がお使いになられる酸素を減らして大変申し訳ありません。ほら早くいいなよクザン。それとも謝れもしない?」
「もう喋るなっ、止めてくれ!」
「君生きてる価値あるの?全く思いつかないし意味わからないよ。空が高いように雲が動くように、君という人間モドキはまるで害悪にしかならず誰の役にたつわけもなく虚しく生きるしかないと決められていたようだね。もう無駄だから生きるのやめたらいいんじゃないかなァ?」
「口をひらくなっ!!」

舌を凍らせ砕き、***からピアスを引きちぎってそれを唇を縫うように使った。そうするのが当たり前かのように、まだまだ冷めている目に熱を見たくて引き裂いた服をどかして何で熱を帯びているのかわからない下半身を擦り付ける

「おれだって、っ、やればできる。***を、黙らせられる。」

あはは、と笑われた気がして、クザンは唇を噛んでその顔を憎悪へと変えた

「おれだってやりゃァできんだよッ!!」

ぶちぶちと肉をちぎって唇を開けた***は、笑いながら目を細める。痛みなど、クザンから与えられるものなど何も感じないかのように

「そういっていつも何もできない臆病なクザン。君にはダッチワイフがせいぜいだよ。いやそれも勿体ないよねェ?だってほら!いざしようとしたらふにゃふにゃだ。もう最高に情けなくて惨めだよ?」
「っ、うるせェッ!くそっ、なんでだ!」
「自分より力の弱い人間に手をあげていきりたたせておいてからーの、使い物になりませんでしたァってやつだよね男として終わってる。この手も結局苦しい思いすらさせられずに離すんだよね。行動全部が無意味な君には必要としてくれる人間は現れないだろうね。いっそ憐れ過ぎて悲惨さに顔を反らしたくなる。」

叫んだ。気がした。実際は声も出ず息を吐いただけだったが、クザンにはもうそれはどうでもいい
筋が浮くほど、大きな手で細い首を締め上げる
笑ったままの***に泣いたまま、クザンはその首が悲鳴をあげるまで手を緩めはしなかった




歪む世界




「ん、」
「っ!***っ!***ごめん***っ、痛いよな、苦しかったよな?ごめんおれもう少しで***を殺すとこだった・・・!」

薬くさく吐き気がするくらい清潔な部屋。そんな病室で目を覚ました***は泣きすがるクザンから目を反らし、窓の外に見える鳥に目尻を下げる。それを見たクザンの呟きに笑みは深められた

「なんで、おれには・・・、」
「ちょっと話しかけるの止めてもらえる?こっちまで人間失格だと思われるだろう?」

腕も脚も目も舌も欠けさせて、体中に痣をこさえながら、***はそれでも何も気にしなかった



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