何をもっての今更か *


彼が誰か一人のものにならないことくらい知っていた。だから、最初から割り切っていた。でも、そういう気持ちは消えないし、肌を重ねる分だけ大きくなるばかり

辛いとか、苦しいとか、よくわからなくなって早二十年。今日も今日とて、味気のない日々を送っている

「んっ、・・・っ、も、う、イキなよぉ、」
「・・・うん、そうだね。」
「わっし、も、ちゃんと、っ、イかせてねェ〜?」
「わかってる。」

また気持ち良くさせられなかった。泣きそうになるのをぐっと堪えて自分をそっちのけでペニスを扱けば、ボルは眉を寄せ目を瞑り顔をそらす。くっ、と声が漏れた

「・・・イキました?」
「見てわかるだろォ〜・・・」

不機嫌な声。胸が痛くては息が出来ない。必死に短く息を吐きだして、萎えてしまったペニスを引き抜き情けなくなりながらありがとうございましたと頭を下げた

「・・・シャワーは勝手に使っていいから、早く帰りなよ〜。」
「ボル、」
「ん〜?」
「もう、止めたいんだ。この関係を。ずっとボルを騙してた。もうずっと、私はボルが好き」
「そうだねェ〜、もう飽きただろうしねぇ・・・」

情けない。情けない情けない情けない。涙を零せば、何で泣くんだよぉと困ったようにボルは眉を下げた




何をもっての今更か




副官である***不在の室内で、サカズキはボルサリーノの来訪に深い溜め息を吐く。唸るようにボルサリーノを責めるサカズキは、何かを堪えるようにフリーズする***を思い出して舌打ちをした

「おどれが悪い。」
「だってぇ、よすぎて頭ん中溶けちまいそうになるんだよォ?あの手この手でいじくりまわすしぃ、今更素直になったらぁ、中年のよがり狂う姿に完全に引かれるよぉ〜・・・?」
「知らん。」
「好きで好きでたまらなくて、うっかり妊娠させたりとか結婚を迫られたりだとか・・・煩わしくないよぉって言いくるめて関係を持ったのにねェ〜・・・わっしはどうも、そういう役割ですら担えない存在になったみてぇだよォ。」
「チッ」

舌打ちされた。と情けないまま顔を上げたボルサリーノは迫るマグマに頭をつかまれ、驚きに開いた口に何かをつっこまれる
ごくんとそれを飲み込んだボルサリーノは治っていく頭を撫でて何をと首を傾げた

「わしがよぅ使うとる自白剤じゃあ。***と二人きりにしてやるけぇ、ありのままぶつかって嫌われるなりなんなりするんじゃな。」
「ちょっ、解毒剤は」
「のうなった。確か予備は***の机にしまわれちょるはずじゃ。」

あっさり部屋から出て行ってしまったサカズキに唖然とし、数秒後立ち直ったボルサリーノは慌てて***の机を漁りだす
***が愛用している香水の匂いが染み付いたコートもイスも、触れる度に香って下腹部が疼きだす
は、はぁ、と熱っぽい吐息を漏らしとうとう布を押し上げるペニスを服の上から押さえつけたボルサリーノは無意識に腰を揺らし、***のコートを湿らすほど下着の中で粘液を滴らせていた

「う〜・・・っ、サカズキっ、変なもん飲ますなよなァ・・・!」
「何をしてるんです?それ、私のコートですよね?」
「っ、」

気づかなかったと勢いよく振り返ったボルサリーノは痴態を上から下まで眺め、そして何事もなかったかのようにサカズキのデスクに追加書類を置く***に顔を歪める
仕方なさそうにボルサリーノのそば、自分のデスクに近づいた***は数秒考える仕草をして手を叩いた。内ポケットから取り出した小袋にまさかと、ボルサリーノが期待を込めて手を伸ばす

「それ、くれるかァい?」
「いいですよ。ご自身で飲まれても意味はありませんが。」

あっさり手には入った薬にほっとしたのも束の間、ボルサリーノはどういうことだと首を傾げ、***を見つめた

「誰かに飲んでもらって、中で出してもらわないと解毒にならないんです。サカズキ大将がエグいやつをと望まれたので科学班に作っていただきました。解毒剤はそれだけです。聞きたい情報だけ聞き出しあとは狂い死ぬまで放置かマグマで灼き殺すので。」
「な、ん、」
「あなたでしたらそういうお相手に困らないかと。どうせサカズキ大将が飲ませたのでしょう、この部屋に呼び出していただいて構いません。」
「っ、なら、わっしを・・・もう一度・・・っ、抱いて、」
「できません。」

バッサリと切り捨てられたボルサリーノは決死の思いでねだった時に感じた羞恥心がどこかに去っていくのを感じながら、どうしてと戦慄く口が形を作る

「あなたが好きで、セフレになりました。後悔しています。今も・・・好きなままです。ですので、もう、自分を偽ることはできません。」
「わっしも***が・・・!」
「そんなに辛いのですか?」
「ちがっ、だから、わっしも***が好きで」
「お願いします。これ以上私は無理なんです。努力したけどあなたは淡々とするばかりで、私からの特別扱いだって迷惑そうに・・・これ以上、砕かれたら・・・粉々になって自分を保てない。」
「信じ、られ、ねェかァ・・・?」

泣きだしたボルサリーノに卑怯だと呟き、***はその体をデスクに倒しベルトを抜き取った。断れりきれるわけがない、好いた相手からの懇願なのだから
解毒剤を奪い飲み込んで、薬のせいか緩む後孔に指をつっこんだ。***は喉をひきつらせたボルサリーノから顔をそらし、吐き気がするほど痛む胃をそっとおさえる。身が捩り切れそうだ

「この分ならすぐに入れても平気ですね。」
「ああああっ!?」

射精しながら悶えるボルサリーノは乱暴に突き立てられるペニスにボロボロと泣き、羞恥心もプライドも殴り捨てて甘ったるく喘いだ
ギュッと唇を噛んだ***ははじめて見る蕩けたボルサリーノに出しますよと吐き捨てる。なぜ今更と、声を聞いただけで腰が砕けそうになりながら奥へ達した

「っ、・・・はぁ、あ、」
「・・・これでおさまりますから。」
「まっ、待ってくれよぉっ!」
「ちょっ、なん、」

ずるりと引き抜いたペニスはまだ脈打っていて、ぐずぐずになっているボルサリーノの孔に戻りたくて疼く。昨夜なら迷わず喰らっていたであろうご馳走を前に、***はつかまれた腕を振り払い必死に理性を保つために拳を握った。ぽたりと血が落ちる。痛みは怒りととてもよく似ていた

「好きなんだよォ***〜!失望されたくなくてずっと我慢してっ、面倒にならないように自制して!なのに捨てるなんてひでェよォ〜!」
「わ、たしが、悪いんですか・・・?」
「わっしをこんなに溺れせといてっ、今更さようならなんて・・・!」
「あなたに触れるのは私だけでは」
「***だけに決まってんだろォ〜・・・!!」

泣いて責め立てるボルサリーノに動揺しっぱなしの***は、押し倒され萎えてきたペニスを咥えられてごくりと生唾を飲み込んだ
ぎこちなく、時折歯が掠めて、それでも精一杯口に含む姿に泣けてくる。***は涙を拭い、たちきっていないペニスに跨がるボルサリーノを見上げた

「あれ、入らない、ぃっ!!?」

ぬるつく後孔に焦ったのもすぐに、緩んだ後孔でずぷんと根元まで一気に飲み込んだボルサリーノは違う違うと首を振り、もっと奥にと腰をくねらせる
抜かないように少し突き上げれば、ボルサリーノは目をトロリとさせ喘いだ。とても気持ちよさそうに、昨日までとはまるで別人。次第に硬度を持つペニスがとうとう内壁を抉れば、ボルサリーノは涎を垂らしながら悦びひんひん泣いた

「こ、んなっ、おっさん、気持ち悪、んぁっ、あ、キモチイイっ、い、そこぉっ、」
「っ、なんなんだっ、今更!」
「あはっ、お゛っ、あ゛、」

好き好きと啄むように口づけられ、とろける舌が唇を舐めまわす。ボルサリーノはイキながらなおも動き、ネジが外れたかのように泣いて悦び***を呼んだ

「ボル、」
「ひぃんっ、ァあ、んっ、んぁっ、***っ、・・・っ、」
「ボル、好きだ。」
「わっしもぉ、***が、好きぃっ、」

どくんと奥深くに吐かれた精に体を仰け反らせいったボルサリーノは、ボロボロと泣いたまま***の上で尚もぐちゅぐちゅと腰を動かす

「こんな、こんっ、ふ、頭とんじまう奴、気持ち悪いだろぉ・・・?でもっ、最後だから、だからっ、」
「我慢、してたのか?」
「っ、だっ、てぇ、情けないだろぉ、〜・・・?」

どこがと驚いたように否定した***はほんとにぃ?と泣くボルサリーノの頭を撫でた
ボルサリーノは安心したように笑い、仲直りと乞う。***は頷き、腰をつかんで密着させたままイイところを抉ってすり潰しだした

やっと誤解を解けありのままをさらけ出せたボルサリーノは娼婦顔負けで乱れ地雷女も裸足で逃げ出すほどに束縛し苛烈極める正義の男を真っ青にさせるほど***にまとわりつき、すべてを凍てつかせる男が思わず結婚祝いを贈るほどの変貌を遂げる
一方の***はそんなボルサリーノの大将権限により隊を移動させられ、窶れながらも幸せそうに笑った



「ボルサリーノ」「男主」「媚薬」「ハピエン」



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