ラズベリル 5


「ニホンもニンゲンもクニもてんにょさまもニンジュツガクエンも、僕には一つもわからない。けど、信じるよ・・・僕の話は、わかった?」
「***さんは宝石でー?月人っていう敵と戦争、しているんですよね?」
「大きな星が六回割れて、一つの浜と一つの海しかない星が***さんの星で、緒の瀬から産まれた・・・んですよね。」
「そう。信じても信じなくてもいいけど、一つわかってほしい。見栄も虚勢も張るよ、隠し事だってする。それでも欺くために偽り貶めるために攻めたりなんてしない。嘘はつかないじゃいいすぎだけど、仲間を守るための嘘以外つかない。」

カチ、カチ、と欠片を髪に合わせる***さんは不思議そうに乱太郎の髪に触れて、細いしふわふわだねと目を細めて手袋を外した
肩近くまである手袋がしゅるりと脱げて、白い手が恐る恐る僕の頬を撫でる

「・・・割れないね。」
「宝石仲間は割れるんですか?」
「割れるよ。仲間を壊したくないから、すごく気をつけてる。」

さわさわさわと右で僕の頬を、左で乱太郎の髪を触る手に温度はない。ないけど、僕たちに向ける目は優しい。だから、恐くない

「君たちが月人でないなら、僕が倒したあの人も月人ではなかったのかな。」
「天女様のことですか?」
「そのてんにょさまっていうのはなんなの?いまいちよく分からない。」
「羽衣を持って妖術を使うんですよー。」
「伝承などではこんな姿をしていると言われています。」

カリカリと乱太郎が地面に昔話に出てくる天女様の絵を描いて、***さんはそれにぎゅっと眉間にしわを寄せる

「それは月人で間違いない。そいつらが、僕たちを連れ去るんだ。」

憎いと険しくなる目も、すぐに無表情になってありがとうと、僕たちに向けて輝く。本当に綺麗な人・・・じゃない宝石さん

「怖がらせてごめん。全ては僕の勘違いから始まったのに・・・」
「いいんです。わたしたち・・・忍術学園も、勘違いしたまま***さんを受け入れたんだと思いますから。」

優しいねと乱太郎を膝に乗せた***さんは、そろそろ戻らないと怒られるかなと言いながらも人間の柔らかさを確かめる。温いのはなんで?柔らかいのはなんで?なにでできてるの?質問をすべて乱太郎の耳元で言うから、乱太郎は顔を真っ赤にしながら僕を見る
でも、僕はスリル満点だなぁなんてちょっとだけ羨ましいから、僕もと両手を伸ばして***さんに抱っこを要求した

「***さんの弱点ってなんですかぁ?」
「伏木蔵!」
「弱点って、戦闘で?」
「うーん・・・人間は頭や胸、心の臓を攻撃されると死んじゃいます。そういうの、あるのかなって。」
「ないよ。僕たちは不死だから。」

粉々になっても息を吹き返す。にたぁと笑った***さんに、僕ちょっとオシッコちびっちゃった。気づいた乱太郎が僕を驚いた顔で見てる。やめてそんな見ないでよー

「・・・ごめんなさい、」
「え?」
「ちびっちゃいました・・・」
「伏木蔵、人の上でなんてことするんだ・・・」
「ちびっちゃうって、なにを?」
「お漏らししちゃったそうです。」
「・・・?ああ!ごめん僕たち排泄しないからよくわからないんだ。」

え!?と驚いた僕たちは食事をすればするものだと思ってたから聞いてみたら***さんは不思議そうに、中が汚れちゃわないのかと首を傾げた

「僕たちは光を食べるから、そういうのがないんだ。」
「なんだか、何から何まで違うんですね。」
「種族が違えば当たり前だよ。」

さてもう行こうかなと立ち上がった***さんはまたどこかでとにたぁと笑って、思わず僕は悲鳴をあげてしまう

「***さんその顔怖いです〜・・・」
「こら伏木蔵!」
「フォスと同じこというんだから全く・・・」

好きでこうじゃないよと自分の頬を撫でた***さんの手が、透けている。驚いた乱太郎に言われ自分の手をみた***さんは帰れるのかなと嬉しそうにまたにたぁと笑って、なんだか騒がせてごめんねと僕たちの頭を撫でながら消えてしまった

「・・・帰っちゃったね。」
「サスペンスだね!」
「ああもう伏木蔵・・・そればっかりなんだから。」




ラズベリル




「あっ、気づいた!ルチルペツォッタイトが起きた!!」
「そんな騒がなくても聞こえています。***、お加減はいかがですか?」
「・・・フォスフォフィライト、と、ルチル?」

欠損は、ないですね。欠けを確認するルチルとこんなかわいい弟を忘れるなんてと騒ぐフォス。二人に、***はほっと安堵の息を吐き出しただいまとゆるやかに首を傾げた

「・・・やはりどこか不具合が?」
「モルガの嘘つき!***普通に笑えるじゃん!!」



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