ラズベリル 2


がくえんちょうにしょくどうの手伝いを任された僕は、変なニオイのする部屋の前で困っていた。しょくどうの手伝いって、具体的に何をするのかな

「あなたが新しい天女様かい?」

こくり。頷いた僕は早くこの月を探し回って仲間を取り戻さないとと、焦っている。だって僕は、月人を憎んでいるから。あいつらは戦争を仕掛けては僕のきょうだいを奪って、新しい戦争で新しい武器として同士討ちをさせる、非道な穢れた存在だから

「じゃあ、配膳をお願いしても平気かしら?」
「はい!」

配膳ってことは何か配るのか?メニューの書かれたボードを横に、カウンターに置いてある変なニオイの塊をみる。なんだあれ

「あなたが新しい天女様ですね?噂通り、輝くほどお美しい。」
「ありがとう。でもダイヤのほうがうんと輝いて綺麗だよ。」

だから月人はダイヤを狙うんでしょ?ダイヤにはボルツがいるから多分大丈夫だけど、あの二人の関係は難しいから心配だ

「言葉、通じるじゃないですか。」

驚いたようにぽつり、彼は僕に首を傾げて二人後ろに並ぶ僕を連れてきた一人を見つめる。その間にいた別の彼も、揃って僕を連れてきた一人を見ていた。なに?なにがおきたの?

「何徹目だ?」
「いやまてお前ら・・・わかるのか?」
「・・・熱があるのか?なら医務室へ行くといい。」

どうやら、僕の言葉がわかる人がいるらしい。なら、発言に気をつけないとな
それにしてもここはどこも天井が低い。この圧迫感、好きじゃないんだけど
ああいやだ、早くみんなを連れて帰りたい。きっと、上手く笑える。そんな気がするんだ
早く帰りたい。大丈夫、考えることは好きだから諦めもしない

「天女様?」
「天女様、大丈夫で」
「わっ!!」

ふと何かが触れた感覚に飛び退き、触れられた腕を庇う。開いてないな?よし。手袋してないのに気づかないなんて、僕はアホだな本当に

「て、天女様?」
「危ないだろ!!硬度8の僕に素手で触るなんてなにを・・・!あ、」

しまった、気をつけようと思ったばかりなのに・・・あぁぁ僕の大馬鹿!驚いた顔されてるよどうしよう、僕が宝石だとわかったら、ぞっとする

「硬度?」
「なんでもないよ、ごめんね。さ、メニューを選んでくれる?」
「あ、はい・・・えっと、Aセットで。」

Aセットとはとしょくどうの人に聞いてトレーを手にした僕は、これで何をするのかと純粋に気になった。そんな僕に苦笑して、しょくどうの人は僕にどれか選んで食事にしていいという。意味がわからないけど

「・・・月人は、草やこの、なに、これを食べるの?あんな色してるからてっきり・・・僕たちと同じように食べないのかと・・・」

なんだかぞっとした。ここでは僕は独りで、当たり前が違いすぎるんだ。早くここをでないと、僕は加工される

「いやだ・・・」
「天女様!」

僕の武器、がくえんちょうにとられたんた。いくらへき開がないと言っても靱性が特級なわけじゃない、丸腰は危険すぎる

「武器、僕の武器っ、僕の!返してください!」

僕はしょくどうから逃げてがくえんちょうの部屋まで走った。途中何人かに声をかけられたけど、知らない
がくえんちょうの部屋へ突入し、驚くがくえんちょうに手を向ける

「僕の武器、それ、返してください。」
「何をなさるおつもりかな。」
「しらばっくれるな月人が、っていうか言葉通じるじゃないか!」

相手が月人一人なら丸腰で構わない。がくえんちょうに突っ込んだ僕は上から降ってきた月人を避け、背後にまわられ攻撃を受けた
カキィンと甲高い音が鳴って、衝撃に背が伸びる。でもチャンスだった。驚く二人の隙をつき武器を取り返した僕は、スラリと武器を抜いて構える

「ラピスもルビーもサファイアもっ、クリソベリルだってグリーンダイヤだって・・・みんなみんなっ、お前らが捕まえて加工して装飾品に変えたんだろっ、」

憎しみが弱まったから、惰性で月人と戦うようになっていたから、僕はここにいるのかもしれない。とんだ怠慢だ、僕は決して憎しみを忘れてはいけなかったのに

「学園長!白点が・・・天女様?ま、まさか同時に二人の天女様だなんて、」

バタバタバタと走り込んできた誰かが、僕をみて青ざめる。がくえんちょうと欠けた武器を手に呆然としていた月人は、報告に僕をみてから天女様ではないのかと僕に問うた

「僕はペツォッタイト、通称***。宝石だ。はく点とは、白い点、か?」

白点とはなんだ黒点となにが違う?ここはどの月で、こいつらは一体・・・いや、全て演技の可能性だってある。だけど今はただ、月人をただ倒すだけだ

「天、***さん!」

がくえんちょうの部屋からでてすぐに見えた白点は、黒点によく似ていた。そこにいたのは一人だったけれど、羽衣を纏う、確かに月人だった

「あれは・・・ダイ、ヤ?」

きらり。耳飾りが陽に輝き、僕の頭中は真っ黒に塗りつぶされた・・・ダイヤまで、ボルツは一体?そんな考えより先に、僕は掛けだしていた



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