ごめんなさい




「もー!三郎、僕の真似をして悪戯するのやめてってば。」
「すまんすまん、もうしないさ。」
「次やったら怒るからね!」

三郎は雷蔵は怒らないと勘違いしていたし、周りも雷蔵は甘いからなぁと諦め混じりで二人をみていた
雷蔵も自分が三郎に甘いとわかりながらもなぁなぁに叱るたけに止まっている。達の悪い悪戯はしないし、いい奴なのを知っているからだ

そうして三郎が調子に乗ってく一方だったある日、日差しから逃げるように日陰で鍛錬やら宿題やらをこなす休日
筆をもって逃げる三郎と、それを追う顔に髭やら目の回り塗りつぶしやら落書きを施された八左ヱ門の姿が賑やかにあった

「雷蔵っ、じゃない三郎だろお前!!いい加減にしろよなーっ!」
「八左ヱ門が廊下で昼寝するのが悪い!邪魔だろう!」
「なら普通に起こせよなー!!」
「それではつまらん!」

性格の異なる三郎と八左ヱ門の絡みはよくある光景で、騒がしいなと組み手をしていた雷蔵と兵助が順番待ちの勘右衛門と一緒にこちらへ向かってくる二人に顔を向け、またやってるよと三人揃って苦笑した

「雷蔵助けてくれ!」
「えぇっ!?」
「あっ、コラ雷蔵を盾にすんな!」

ぐいっと肩を掴まれ後ろに逃げ込まれた雷蔵は、呆れながら笑い前に来てガルルルと威嚇する八左ヱ門をみる
なにされたの?と見ればわかることを取りあえず聞いてみるが、落書きされたんだよとやっぱりな回答をいただいた

「三郎、謝ったの?」
「悪かった悪かった。」
「謝るならちゃんとでしょ。」
「スイマセン。」

べーっと舌をだして謝った三郎に八左ヱ門は青筋をたて、い組は餓鬼かと呆れてしまう
雷蔵も苦笑しながら三郎。と声で咎めるも、それが気に入らない三郎はつん!とそっぽを向いてしまった

「あのねぇ三郎、いい加減にしないと僕も怒るって言ってるでしょ?」

完全に拗ねた三郎を強く呼んだ雷蔵に、八左ヱ門とい組二人は少し驚いたように雷蔵をみる
三郎も多少の動揺をみせて、けれど雷蔵は自分に甘いと分かっているのであくまで強気の姿勢を崩さなかった

「廊下で寝ていたら悪戯可かと思うじゃないか。この程度で怒るだなんて器が小さい。」
「んだとコラ!!」
「声を荒げるな。いいじゃないか、洗えば落ちる。」
「そーいう問題じゃねーの!」
「それに、謝ったじゃないか。」
「あーあーあー!!」

突然の大声に、発した雷蔵以外が目を見開き雷蔵を見つめて動きを止める
数秒の沈黙の後に三郎が焦りながら雷蔵?と呼べば、雷蔵はキッ!と三郎を睨んで怒鳴った

「うっつぁしわ!!!何度いやわかるんじゃ!!!いじやけんな!!!そこにおじゃこれ!」

ひっと小さく悲鳴を発したのは誰か、雷蔵が怒声と同時に地面を指差すものだから、自然と四人が揃って雷蔵の前に正座する

「いづまでもおだつってんでねーぞい!!ほんにおんしゃあはおんつぁげすか?こら!こないだ先生にもびしゃもらってたんだそうが!!わっさばっかしてっとかっくらすけっぞ!」
「ら、らいぞうさん?」
「はーぁ・・・おらやんだくなっちまう、にしゃといんの。」

深いため息を吐き捨てるようにしてその場から離れていってしまう雷蔵に、誰も動くことはできなかった




ごめんなさい




「ら、雷蔵、」
「・・・。」
「雷蔵、雷蔵ごめん、」
「謝る相手が違う。」
「八左ヱ門にはちゃんと謝ってきた。」

足を止めて顔だけで振り返った雷蔵は、ぎろっと三郎を睨みつけたまま僕言ったよねと低い声をだす
目を泳がせた三郎が伏いてごめんなさいと頭を下げた

「・・・はぁ。」
「っ、雷蔵!」

スタスタスタと歩いていってしまう雷蔵を追いかける三郎を盗み見ながら、八左ヱ門とい組二人は雷蔵は怒らせないようにしようと誓って頷いた


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