果たしてどちらが * 下




何が起きたの何がしたいの何をさせたいの何でこうなるの

夢をみているの?なら、なんて悪い夢
起きてからより辛くなる、なんて嫌な夢

片足がうまく曲げられない私が必死で向かった先は、私が散々血反吐吐いて転げ回った屋上
骨を折られて肉を抉られ皮を剥がれて片目を失明した、屋上

「***!」
「・・・なんでしょう。」

いつの間にかバタバタと皆が集まっていた
代表のように立花先輩が私を呼び、私は振り向かず答えるだけ

「一体どうしたんだ。伊作から聞いたが、ひどい怪我を負っているそうじゃないか。」

込み上げてきたのは胃液かと逆らわず吐き出せば赤黒い血がコンクリを染めた
はいはいいつものいつものと袖で拭えば、善法寺先輩がシンパイやらキュウキュウシャやら***をトメテやら呪文を吐き出す
とうとう呪術まで使えるようになりましたかとか思いつつ、私は自分がいたぶられた形跡のない屋上をぐるっとみて、ならばあれはどうかと
恥ずかしい話びびって漏らしてしまったフェンスの向こう側へとガシャガシャフェンスを慣らしながら登る

「小平太っ!文次郎止めて!」
「お、おう!」
「わ、わたしが触れたらまた怪我させてしまうよいさっくん!」
「***が死んでもいいの!?」
「いやだ!」

わあわあと賑やかな皆が騒がしく近づいてくるのを振り返り、私はフェンス越しに目を細める
ここに私のいた形跡はない。欠片もない。けれど彼らは私を知っている
ぼろぼろと泣きながらシナナイデ、イキテイケナクナルと呪文を叫ぶ人が数人、あとは青ざめたりなんだり、大凡私の知る彼らはいない

「生きたくない、」

突き落とされそうだった時とは違い、私の身体は呆気なく宙に放り出された




果たしてどちらが



同時刻、同姓同名の女子生徒が自殺を遂げた
抵抗激しく残る死体は思春期特有の突発的なものとして、新聞の片隅にも載らなかった



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