果たしてどちらが * 中




「善法寺先輩!」
「おはようございます、先輩。」
「おはよう尾浜、久々知。君達が保健室にくるなんて珍し・・・***?」
「おはようございます。」

保健室に行けば必ずいる善法寺先輩。保健室の住人とか言われてるこの人は、ただの鬼畜生
善法寺先輩の向かいに座らせられた私は、髪をピンで上げられて目を瞑る。痛みに備えて感覚を散らすために

「少し染みるよ。」
「はい。」

少しって何。のたうち回るレベルの少しって聞いたことない

覚悟とは反対に、生温い液体が脱脂綿でぴちゃりと傷に触れた
遅効性かと身構えてもぐりぐりされなければそのまま拭われてテープガーゼがあてられる
他は?と問われてわからないまま尾浜くんと久々知くんが指摘する怪我が次々と手当てされていった
あまりにあっけなく、あっさりと身体中(流石に服はブラウス抱けぬがされた程度)ガーゼやら包帯やらで真っ白くなった私は、訳が分からず呆然と善法寺先輩をみる
それにどうしたの?と首を傾げながら微笑む善法寺先輩は、***。と静かに私を呼んだ

「***が静かなのも表情が薄いのもいつもだし、時々奇抜な髪型とかしてる。でも、今日はおかしい。こんな、土日だけでついたにしては治るのが早い傷やエグい生傷、一体誰にやられたの?」

思わず絶句。意味分からなすぎて意識飛びかけた
いや、だって明らかに、おかしいのは善法寺先輩だ
頭打ったのか?ならそのまま生まれてきたことすら忘れちゃえばよかったのに

「教えて***。」
「俺たちが思い知らせてやるのだ。」
「・・・、」

違う。尾浜くんも久々知くんも、私の知るふたりじゃない
一体全体どうして、何が起こったの

「誰か、」

誰か、早く私の知る人を探さないと、自分を保てない
日常が日常じゃなく進むなんて、受け入れて諦めた私に何を望んでいるの




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