そして、、


そして、の続き
微弱ながらヤンデレ要素があります


「おじさーん、私期末考査終わったばかりでね、早く家に帰りたいの。」
「うん。」
「おじさんの昔話も、未だに夢で見るっていう女性も、私には関係ないの。」
「うん。」
「だから、帰して。」
「いやなのだ。」

ガチャガチャと手錠を鳴らして外そうとする***を無理のないようにベッドへ押し倒すと、兵助は腹周りに抱きつくようにして寝てしまう
はぁ。と溜め息をついてぼーっと壁を見つめる***は、このおじさん誰なんだろうと部屋を見える範囲で見回した

「おじさん、誰。」
「久々知兵助。***を、ずっと探してたのだ。」
「ふぅん・・・知りたかったのは名前じゃないけど。ねぇ、帰りたい。」
「今帰したら、明日も会える?明後日も明明後日も、***は俺から離れない?」
「・・・会わないでしょ、普通。」
「じゃあだめなのだ。」

もう一度溜め息をこぼして、***はお腹すいたとおじさん。と声をかける
兵助はなに?と***を見上げ、***はポケットにあるチョコレートとってと自分の隣に置かれているバッグに目をやった

「そんな油分の多くて高カロリーなものより、ちゃんとしたもの食べるのだ。」
「私好き嫌い激しいの。主食がチョコレートだから気にしないで。お母さんたちも許してることを他人にとやかく言われたくない。」「豆腐料理をご馳走するのだ。」

聞いてよ人の話と目をきつめに瞑ると、不味かったら食べないからねと漏らした

「大丈夫なのだ。」
「なにがよ。」
「***は俺の料理が大好きだったし俺の作った豆腐も大好きだった。だから、大丈夫なのだ。」

にこにこと起き上がって部屋から出ていこうとする兵助を***はちょっと、と微かに震えた声で呼び止める
ことりと首を傾げた兵助に、***はやっぱり人違いかなにかよと上擦った声を落とした

「過去形使ってるけど、私たち初対面だよね?」
「今の***はね。」
「な、なら私が豆腐好きとか、知らないよね?」
「なんで?」

なんで?とオウム返しをしてしまった***に、兵助はとろけそうなほどの優しい笑みを浮かべ、そして***の鼻頭に優しくキスをすると
触れるだけのキスを唇に落とし、目を見開いて固まる***に待っててねと、兵助は部屋から出て行った

「俺は***を愛してるし、***も俺を愛してる。だから、全部解るんだ。」

そう囁くことも忘れずに

部屋に残された***は粟立った肌を擦ることもできずに、とれない手錠にじわりと涙を浮かべた
相手は成人男性でこっちは女子学生。大人しく着いてきたのも、抵抗するより隙をみるほうが逃げやすいと思ったからで、話せばなんとかなりそうな優男だったから油断もしていたのだ
改めて、腰を掴まれて見れなかっ側を見回した***は、専用のガラス戸で塞がれている本棚を目を凝らして見つめ、涙をぴたりととめる
目が釘付けになった先には、自分の名前が書いてあるファイルの陳列棚があった


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