誰を選ぶ?
「**!これから弓術の鍛練にいかないか?」
「弓術?うん。いいよ。」
兵助に手を引かれて立った**の、空いている手を勘右衛門が掴み
え?と振り向いた**に、勘右衛門はにこりと笑う
「俺と町にいかない?」
「いや、これから弓術するから」
「九割方豆腐で形成されてる男より楽しませるよ?」
「勘ちゃんなんて九割方甘味じゃないか。」
訳わからない罵り合いをするい組からそろりと離れると、**は困ったように笑いながらそれを見守る
ヒートアップして互いに武器を取りだしたところで、**は背後から誰かに抱きしめられた
「三郎、」
気配消してこないでよ、ビックリした。と微かに笑った**に
雷蔵がい組は放置で僕たちの部屋においでよと笑う
喧嘩してるし、いいよ。と頷いた瞬間、い組二人がぐりんとこちらを向き
三郎と雷蔵は**を脇から固めて、残念でした。と舌を出して笑って見せた
「**は僕たちと遊ぶんだから、邪魔しないでよね?」
「元は俺が誘ったのだ。横取りさせるわけないだろ。」
「町へ行くなら兵助と行けばいい。」
「俺は**と行きたいの。」
バチバチと火花散るなか、当事者である**はボケッと成り行きを静観
本人は、なら皆で遊べばいいんじゃない?と、口には出さないが思っていたりする
ぐいっと、雷蔵に抱きしめられた
「**は僕が好きだよね?」
「うん。」
「私のことも好きだろ?」
「うん。」
はむ。と三郎が耳朶を噛めば、ぴくりと反応した**を勘右衛門が引っ張り
転びそうになりながらも今度は勘右衛門の腕の中におさまった**は
騒がしい四人から視線を外し、ふと周りを見回した
ぱちり。少し遠くで委員会をしていた八左ヱ門と目があう
その顔は、眉間に深い皺を刻む怖いもの
なんで怒ってるんだろう?毒虫がみつからないのかな?と
勘右衛門の腕からするりと抜け出した**は、制止を求める四人をおいて八左ヱ門に近づく
「毒虫散歩中?」
「・・・ああ。」
やっぱり不機嫌。と、ぷいと別の場所に行ってしまおうとする八左ヱ門を引き止め
どうしたの?と首を傾げた
それに対して、別に。と答えた八左ヱ門の顔は怖いまま
「ねえ八左っ、」
私なにかした?教えて?とくっついてくる**を振り払うと、八左ヱ門は塀に**を押さえつけた
「いたっ、」
「・・・悪い。」
一瞬溢れ出た激情を抑え込む姿に、**は八左ヱ門の名前を静かに呼ぶ
具合が悪いの?新野先生なら医務室にいらっしゃると思うよ?と見つめてくる姿に、短く息を吐いた八左ヱ門が口を開いた
「・・・。・・・なぁ、」
「なに?」
「やることないなら、委員会手伝ってくんね?」
「いいよ。」
手伝う手伝う。と笑う姿を遮るように、兵助と勘右衛門が**の前に立ち
雷蔵と三郎が**を抱き締めた
「あとから来てとってっちゃダメなのだ。」
「**も、なんで俺たちより八左ヱ門を優先するの?」
「遊ぶか復習か委員会なら、委員会が大事かなって・・・」
「でも、先に私達と約束しただろ?」
「ちょっと待つのだ。一番最初は俺。**は俺を選ぶべきなのだ!」
「ごめん、僕豆腐の言葉理解できない。」
雷蔵が毒吐いた・・・と雷蔵をみた**を、八左ヱ門が呼んだ
「**。こっち来いよ。」
はぁ。と溜め息混じりに、虫網の柄で肩をトントンと叩く姿に
**は雷蔵と三郎からまたするりと抜けて、八左ヱ門の虫網をとった
「八左、委員会が無事終わったらギューッてしてくれる?」
いいでしょ?と笑う**に、八左ヱ門は無言で**を担ぎ上げると
兵助たちの文句も無視してその場から逃げる
舌を噛まないように口を閉じていた**がおろされたのは裏々山
八左速い。と文句をいいながらよろけたのを支えられて、後ろから抱き締められた
「八左、どうしたの?」
「・・・**いい匂いするな。」
嗅がれてる!?と抜けようとする**を更に強く抱き締めると
八左ヱ門はその首筋に顔を埋める
「今度兵助たちが取り合いはじめたらさ、俺のとここいよ。」
「助けてくれるの?」
「助けてやるよ。」
「じゃあそうするね。」
八左ヱ門は優しいなぁと笑う**に、本人はだろ?と微かに笑った
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