「らーいぞ!チョコちょーだい!」

はい!と両手を出した***に、不破はしょうがないなぁと笑う
そして、鞄の中にあった複数個のチョコを手渡した

可愛いらしく、また、綺麗にラッピングされたチョコレート菓子・・・そう、今日はバレンタインデー

「***だって沢山貰ってるじゃないか。」

不破からもらったチョコを自分の鞄にしまおうとすれば
ファスナーを開けてすぐ、大小様々なプレゼントが顔をだす

「さぶちゃんおはよ!さぶちゃんもチョコくれるんでしょ?」
「なんで私があげるんだ。逆だ逆。」
「おはよーございます!」

ぶーと膨れた***は、元気よく挨拶をしながら教室へ入ってきた竹谷を見て、目をキラーンと光らせた

席に座り引き出しの中に入れられていたハート型のプレゼントを取り出し、竹谷の手にはこれで三つのチョコが
廊下にあるロッカーや部活でもまだまだ増えると予想される竹谷のチョコは、毎年のように***の餌食となっていた

「たけたけそのチョコ私にくれるんでしょ?くれるよね?」
「はっ、はぁ!?やらねーしこれは俺んだ!」

三郎が沢山持ってんじゃんかそっち行け!と数個持っていたチョコを後ろ手に隠す

「私が甘党だと知っててそれを言うか。」
「少しくらいやれよ!」
「たけたけちょーだい!」

サッと手を伸ばせば、竹谷は立ち上がり、ぐっと腕をあげて逃げる
ジャンプしてそれをとろうとしても、背丈の違いもありギリギリ届かない

「八左ヱ門、お願い・・・」
「やっ、らねぇっつの!」

仲いいねぇとのほほんと笑う不破に、いちゃつくならよそでやれ。と呆れ顔の鉢屋
そんな二人はもう視界に入ってないのだろう

「意地でも奪ってやる・・・!!」
「目がこえーよ***!!なっ、ならかわりにお前がチョコくれよ!」
「いいよ!」
「は、・・・うわっ!!?」

がたーん!と後ろの椅子を巻き込み、竹谷を押し倒す形で***と二人、教室の床に倒れ込んだ
いってぇ、と顔をしかめる竹谷をよそに、***は床に散らばったチョコをひょいひょいと拾い上げてニコニコと笑う

「ありがとーたけたけ!」
「あっ、てめっ!」
「今年も私の勝ち!戦利品はありがたくホットチョコのお供にさせていただきます。」

しまってくるー!と笑顔のまま教室から出て行った***を、竹谷が慌てて追いかけた

ぽいぽいぽいと竹谷から奪ったチョコと、鞄の中のチョコをロッカーの中にいれていく
その手を、竹谷ががっしりと掴んだ

「お前なぁっ!毎年毎年」
「たけたけうるさーい。」

わ、悪い。と謝って、はっとする。怒りたくなるようなことをしたのは誰だと
悪いのはお前だろと言いかけて、目の前に差し出された四角い箱に口をあけたまま差し出した相手、***をみた

「ハッピーバレンタイン!」
「・・・俺に?」
「たけたけだけに。」

手作りだよーとニコニコする***に、怒っているのも忘れて
ズイと差し出されていたプレゼントを素直に受け取る

「あ、りがとう。」
「食べる専門だからさー沢山失敗しちゃったんだけど、多分食べれるから!」
「お、おう、」

単純な包装を解いて箱をあければ、白と茶色の可愛らしいトリュフが鎮座していて

「いっ、今食べるの!?」
「・・・え?ダメか?」

その一つをぱくりと頂けば、ニカリと笑う

「うまいじゃん!」
「ほ、ほんと?」
「おう!」

やったーと笑った***が、粉砂糖のついた竹谷の手をつかみ
あのね、と照れ笑い

「私ね、たけたけが好きなんだー・・・」
「・・・・・・おほー・・・」
「よければ、付き合ってくれないかなー・・・なんて、」

耳まで真っ赤にして下を向いている姿は、まるで女の子
いや、元から女なのだが、いかんせん普段の姿はそう見えない

新鮮な姿に、ありかもしれない。と頷いた

「俺でよければ・・・」
「!!やったー!」

わーい!と竹谷に飛びつけば、さっきと同じように
竹谷を押し倒す形で***と二人廊下に倒れ込んだ

「おまっ、加減を」
「たけたけー!」

キャーと抱きついていた***が、竹谷の上に座り直し
ニコニコではなくふわりと愛らしく笑ってみせる

「大好き。」
「!」

その笑みに、竹谷の顔に赤みがさした

「それは・・・反則だろー・・・・・・」
「チョコ、返さなくていいよね?」
「・・・・・・もう好きにしてくれ、」

不安そうにみてくる***にそう返せば、***はまたニコリと笑う

「なぁ。」
「なに?」

よいしょ。と竹谷に手を貸して引き起こした***がこちらを見上げた瞬間
顎に手を添えて口づけた

「っ!!?〜〜っ!なっ、たっ、たけたけ、」
「八左ヱ門って呼んでくんねーの?」
「は、はち、はちざ、」

む〜と唸る***の顎をつかんだまま、竹谷はほら。と薄く笑う

「さっきは普通に呼んだだろ?」
「うっ、うるさい八左ヱ門!!格好良すぎるんだバカー!!」

ダーッと逃げていった***を見送り、竹谷は口元に手を当ててローカーに寄りかかった

「ヤバ・・・すっげー可愛いんですけど・・・・・・」