3 ある日、変化

***の朝は素早く完璧な身支度の後、七松を迎えに上がることから始まる
朝練は七松の体力にあわせ行い、朝食を共にし授業に参加
昼食はもちろん、委員会に所属していない***は当たり前のように体育委員会に顔を出し付き合う
夕食を作る様はまるで夫婦であり、風呂も夜練も共にし、今生の別れのように離れようとしない七松を諭し
そこでやっと離れる

そんな日常の中、漸く七松が変わった
それは、***の望むかたちで


「おはようございます。」
「おはよう鉢屋。今日も素晴らしい変装だね。」

このやり取りは毎朝変わらない
そうして二人は笑みを貼り付けたまますれ違う

「すいませんっ、」
「何も謝ることはないよ、不破。」
「***、」
「どうなさいました?」

双忍揃うときは決まって不破が謝罪し、続きそうな会話を七松が遮る
これもやはりお決まり

「・・・手を繋ぎだい。」
「いいですよ。」

これでいかがでしょう?と恋人つなぎを見せれば、七松は暗い表情を一変させ
いつも通り眩しい笑みで***の手をひく
その後を、不破と苦笑しあった中在家がおう

けれど、この日は何かが違っていた
それは七松の中で起こった・・・否、先日の中在家との会話のあとの自問自答で自覚した感情の一点

「なぁ***。」
「はい小平太様。」

食堂の前でピタリと止まった七松に、***は首を傾げる
そばにいた中在家は二人を見比べ、七松に視線を固定した

「私は、***が好きなんだ。」
「はい。存じております。」
「・・・愛してるんだ。」
「・・・愛、ですか?」

頷く七松と、首を傾げたままの***
暫くの沈黙のあと、とろけるような笑みで***は七松に抱きついた

「私も、お慕いしております。幼い頃よりずっと、私は一等強い想いを小平太様に抱いておりました。」

嘘を混ぜた本音に、誰も気づかない
太陽のようにそうか!と笑った七松も気づかない


(愛してる。その言葉を待ってた。)


ここからは、体に依存させる
具合はいいらしい体を存分に使い、中毒のように。

嫌悪感なんて感じない
あるのは、復讐心

あの頃は当主ただ一人に向けていたコレは、次第に主人である七松にも向かい
今では七松の方へ向ける想いのほうが強い

(望まれ生まれ、愛され育つ。それが憎い。お門違い?んなの知るか。)


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