選んだ先の生き地獄

分岐***生存end後



「・・・っ、ぁ、」

微かに漏れる声に虚ろな顔を下へ向けた七松は、***。と微かに漏らして唇を噛む
戸を隔てた向こうでは、最愛の人が自分ではない誰かを抱いていて、甘い睦言を吐いていた
けれど、嫉妬に駆られて邪魔などすれば七松のそばから最愛の人は消えてしまう
わかっているからこそ、七松は聞こえる声に反応してしまうほどに最愛の人にどっぷりとハマっている自分をどうすることもできず
ただただ早く終わってくれと願うばかり

「今日は、わたしを・・・」

愛してくれる日なのにと消えていく声。それは聞くだけで胸が締め付けられるような響きを持っていて
眉をハの字に垂らした七松は自身の言葉に胸を詰まらせ、しゃがみこんで泣きそうになるのをこらえた

「***さっ、」
「勘、可愛い。」

やめてと、とうとう溢れた涙は畳を濡らし、七松はぴしぴしとひびの入っていくような音を自分から感じていた

「勘、愛してる。」

違う違う、今日はわたしの日なのに、なんで尾浜にそんなこというんだ。お願い***、早くわたしのとこにきて。
そう叫びたいのに、声がでない

どれくらい時間が経っただろう。数分の気もするし何時間の気もする
ただ、湯浴み後だろう姿の***が小平太様。と呼ぶ声でぴくりと肩を揺らした七松は、どこをみているのかわからない焦点があわない目で***を見上げ
小刻みに震える手を縋るように伸ばした

「***っ、」
「かわいそうな小平太様。私など早く嫌いになって、逃げてしまえばいいものを。」

優しげな声でなんてことを言うのかと頭を力なく横にふった七松は、わたしを捨てないでと絞り出した掠れる声で訴える
それにふわりと微笑んだ***は、小平太様。と以前と同じように、今ならわかる甘さと優しさを含ませた声で呼び

「***っ、」
「小平太様、愛してますよ。」
「***っ、わたしも、わたしも愛してるんだ!だから、だから、わたしを忘れないで・・・!」

ええもちろんと額に唇を触れさせた***に歓喜を目に表した七松は、触れて良いかと震えた声で問い
約束ですから好きなだけと答えた***は、愛してると抱きついてきた七松に私もですと呟いた


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