望むわけのない残酷
「ひっ、ぅ、」

喉から搾り取られたような声が漏れた。情けないけど、それが精一杯で取り繕うことなんでできない

「で?答える気になった?」
「っ、しら、なっ、」
「はァ・・・ああそう。」

体温が一気に奪われる感覚。足も腕もぴくりとも動かせずに、私は激痛に襲われた

「ァあ゛あ゛あ゛ッ!!」
「痛い?冷たい?」
「い゛やァああ゛っ!」

針で刺されたような焼かれたような、とにかく体験したこのない痛み。喉がひりつくように痛んでも叫ぶのを止められず、必死に縮こまりながら私を影で覆う巨体を見上げるしかない

「○○、つったよな。」
「あ、う゛、う゛っ、うぐ、う゛〜っ!あ゛ー!」
「うんうん痛い痛い。いてェのはよーくわかっから。答えりゃすぐに溶かしてやるよ。」
「ひゅぐッ、」

息が白く、舌に霜がおりて冷気に肺が凍りそう。なのに、一切、気にならないみたいに見下ろされる

「目的はなんだ?」
「じらないい゛ッ!じりまぜんからっ、私なにもっ!!」
「なら何でおれの部屋にいるわけ。たいしたことねェ書類手にわざわざさ。」

涙と鼻水でどろどろになった顔に大きな掌が近づき、漂う冷気に絶叫して許しを乞う。怖くて痛くて死にたくなくて、悪いことなんてなんにもしてないのに許してくださいと泣きわめいた

「・・・ちょっと、大丈夫か?」

なにが大丈夫なの?なんにも大丈夫じゃない!なんで、そんなこと聞くのかわからなくて首が千切れそうなくらい首をふる

「まさか・・・本当に、ただの一般人なわけ?」

信じられないといった響きに頷くだけの気力はなく、私はただただ逃避する頭に任せて意識を手放した


そして騒ぎを聞き付けて部屋へ飛び込んできたセンゴクに事の顛末を聞いたクザンは真っ青。かわいそうなくらい色んな汁でぐちゃぐちゃになった夢主を抱き上げで医務室に駆け込む。


ぼやける視界を気にせず身を捩り部屋を確認すれば、端に過ぎた巨体が首をかしげた

「起きたか?」

ひゅうと空気を飲み身を竦めれば走る痛み。苦悶を浮かべ悲鳴を上げた私に、巨体を椅子から浮かせたままさ迷うように手が動いて水差しをつかんだ
意味がわからず差し出されたグラスを反射で払った私は割れたその音に再び悲鳴を漏らして痛いのはもう嫌だと叫んで、ベッドから崩れるように落ちる
刺さる破片に痛いままの手がそれを感じられないことに動揺して、力の入らない足に顔を向けた

「なあ、」
「ひィッ・・・!」
「っ、もうしねェから、触っても、いいか?」

酷く傷ついたような顔をした巨体は、床に膝をついて感覚のない腕を掴む。甦る痛みや寒さや諸々に、全身で拒絶し嘔吐した

「悪かった!お使い最中だったんだよな!?センゴクさんに全部聞いたんだ、その力のことも全」
「いやァー!!」

体中のありとあらゆる部分が共鳴するように、私は叫び暴れ悟る。ああ、もう、私の手足は私のものじゃないんだって

「て、てっ、てぇうごかないぃっ・・・!あしっ、わらしのあしはっ!」
「ッ、」
「ひぐっ、ひっ、う、ひっく、うう゛う゛!!」

いきなり襲いかかる奴はいない。センゴクの使いだと言えばいい。大丈夫。頑張って挨拶してきなさい。そう言われたから頑張ったのにと嗚咽を漏らして、死にそうな面持ちで巨体を拒絶し続けた



ダメだ、経緯も今後も浮かばない。ただ異人の少女が痛め付けられ手足を切断するしかなくなって、負い目しかないクザンと部屋から(とていうかベッドから)出なくなってしまった夢主とが仲直らず、夢主が自ら死を選んでクザンの目の前で首掻き切る話が読みたい。