正しくない自分
「・・・あんた誰?ここには、あれ?誰がいたっけ。」
「おいおい朝から何だっつーのよ、寝ぼけてんの?」
「ていうか、顔面に血飛沫ってどういうこと。」
「物騒だなァおい。どうしたのよ一体・・・おれァクザンだ。わかるか?」
「え?あんたが、何?もう一回言って。」
「おれァ□□□だって!□□□の恋人!」
「あんたが何だよ。何の恋人?ちょ、もう、わけわかんないわ。いや、待ってくれ、□□□はどこだ?一緒に寝ててんだ。」
「だから!□□□が一緒に寝てたのはおれだって!」

写真、窓から見える看板、道を歩く人の顔。全部が血飛沫で朝から血生臭い。○○は混乱しもよおした吐き気を堪えきれずに嘔吐する。真っ赤な血の、吐瀉物だ。例に漏れず血生臭い

「ォ、え゛っ、げェ、」
「ちょ、オイッ、□□□、一体どうしちまったんだ!」

医者をと電伝虫を掴んだ誰かが口にする言葉全てが、もう染め上げられ聞こえない。尋常ではない事態に、○○自身ははっきりと異常を理解した
吐血はしたが、これは本当の意味での吐血ではなく、顔は特殊メイクではなく、言葉は加工されていない。全て、自分の脳の異常だと

「・・・□□□、今医者が、っ、□□□!!」

頭がおかしくなった人間は見たことがある。ああなるくらいならと躊躇うことなく首をかっ切った○○は、クザンに抱かれ腕を垂れさせた
声もなく首を振ったクザンは、○○の顔に涙を降らせながら嘘だろと呟く
けれど、少しして、○○はゆるりと頭を動かし目を開けた

「・・・死ねもしないか。なあ、□□□。」
「・・・□□□?生きてん、の?」
「□□□、なんだろ?□□□、今、な、□□□の顔が見えないんだ。顔だけじゃなくて、名前とか、そういうのもわからない。頭、おかしくなったみたいだ。死ねも、しない。」

ああ、よかった。手をのばした○○はふわりと笑い、落ちてくる涙にこれはわかると呟く
呟いて、クザンから離れ歯を食い縛った

「こんなイカレタ頭、自分で嫌になる。受け入れられない。□□□、君のそばにもいれない。治るまで、離れていたい。」
「っ、い、やだ!おれァ□□□を手放す気なんてないからな。」
「・・・□□□、なぜ、」