!現代パロディ


休日の夜。観たい映画があるの、 と彼女に言われ、買い物の帰りにレンタルショップでその映画のDVDを借りた。数ヶ月前に話題になった恋愛モノの映画だった。


「これね、原作読んだんだけど、やっぱり映画でも観てみたいなって思って」


嬉しそうに話す彼女。個人的に恋愛映画はあまり得意ではないが、彼女と観るなら退屈はしなさそうだ。どういう意味かは後から説明するとして。私はプレーヤーの電源を入れて、再生ボタンを押した。


「…………」

「わーかっこいい!」

「………」

「もーこのキャラクター素敵だよぉ」


始まって30分。やはり私には恋愛モノは合わないようだ。展開が読めてしまうしベタすぎて馬鹿らしく思えてしまう。完全に飽きてしまった。
……ので、これからは別のことをして楽しもうと思う。私が退屈しない理由をこれから説明しよう。


「……ひめ」


隣に座る彼女の肩に腕を回し、そっと抱き寄せる。そして耳元で彼女の名前を呼んだ。
映画に集中していた彼女は私の動きに全く気付いていなかったようで。


「え?!あ、あの、は、鉢屋くん?!」


顔を真っ赤にしてあわあわするひめ。その反応が可愛いくて私はまた彼女にちょっかいを出す。


「映画、観るんだろ?集中して観なさい」


耳元で囁いてそのままぺろり。彼女の耳に舌を這わした。途端にビクンと震えるひめの身体。そしてまたぺろり舌を這わす。


「ち、ちょっと!は、鉢屋くんてば!!」

「なんだ?」


ひめはさらに顔を赤くして、少しだけ私と距離をとった。(せっかく抱き寄せたのに…)そして映画そっちのけで私に文句を言い出した。


「み、耳!!舐めるの、だめ!」

「なんで?」

「し、集中できないから!」

「じゃあどこならいい?」

「じゃあ、じゃないよ!どこもだめだよ!」


ただ、その文句も可愛いらしい文句ばかりで。それもまた私の加虐心を煽ることになるのに。


「そもそも!なんで舐めるの?意味がわからないよ!」


相当慌てている。普段は落ち着いてふわふわ温かい彼女が、こうも慌てるとは。舐めるのは少しばかり刺激が強かっただろうか。
……かといって止めるつもりはないが。


「そんなの、お前が甘いからに決まってるだろう?」


そうだな、飴みたいに、甘い。
彼女にそう言って、そのまま顔を引き寄せる。そして固まる彼女の唇をぺろり。あぁ、やはり彼女は甘い。


「い、い、い…いま!く、ちびる…!な、なめ…!!」

「今度はどこがいいか?ここ?それともここか?」


首筋から胸元に、膝から太ももにすうっと指を這わす。そんな私の行動に、慌てていた彼女も行動停止。固まってしまった。あ、これはやりすぎたかもしれない。


「………」

「……ひめ?」


おーい、と声をかけて目の前で手を振る。すると、ようやく、気がついたのか、はっ!っと目を見開いて。


「鉢屋くんの馬鹿!もう知らない!」


私の手を振りほどき、そう言い残して部屋から出ていってしまった。これはやりすぎました、はい、私、やりすぎましたね。調子にのりました、すみません。
私はすぐに彼女を追いかけた。


「ま、待てよ!ご、ごめん、やりすぎた…!」


玄関前で彼女を捕獲して。すぐに謝罪。謝るくらいなら最初からするな!と怒られてしまった。
そして。ごめんなさい、すみませんでした、謝り倒してようやく許しを得た。
2人で部屋に戻り、少し間を取ってソファに座る私達。やはり警戒されている。


「次したら出ていくからね!」

「わかってる」


そして再開される映画鑑賞。
出ていかれては困るので、私は大人しく映画に視線を向ける。変わらずつまらない内容で、映画の中のキャラクターはいちゃいちゃラブラブ。
見ていられなくて、他のことに気をそらそうと机の上に無造作に置かれたお菓子に手を伸ばす。そこにあったのはイチゴ味の飴玉。


「仕方ない、今はお菓子で我慢するか…」


本当は違う飴を味わいたいけれど。今度やったら許してもらえないのはわかっているので。
はぁと小さくため息をついて、俺はパッケージを開けた。口に入れた飴玉は当然のように甘い。けれど、飴玉よりも彼女の方が………これ以上は黙っておく。









スイートキャンディ
(飴玉のように甘い、私の彼女)



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仲良くしてくれるアメに。
ついったーでリクをいただきました。



20140526



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