!現代パロディ


「あ、このブーケ…」


平日の昼下がり。忙しなく人が行き交う中、俺はテキトーに街をブラついていた。ちょっとオシャレな雑貨屋だとか好みな服のショップだとか買いもしないのに立ち寄ったりなんかして。俗に言うウィンドウショッピングというやつ。
そして、たまたま。ほんと、たまたま通りかかった花屋で、青色の花で束ねられた小さなブーケが目にとまった。


「なんか、ひめっぽいなぁ」


ふと、頭に浮かぶ愛おしい彼女の姿。なんでだろう。初めて見る花なのに。
五枚の花びらが星のように開いている。淡いブルーの色合いで小さな花がいくつも並んでいて。その花から感じた清らかで優しい雰囲気が彼女に似ていると思った。


「なにかお探しですか?」


店先で立ち止まる俺を見て、お客だと思ったのか、店員が声をかけてきた。ナイスタイミング。この花について聞いてみようか。


「このブーケ、可愛いですね。なんていう名前なんですか?」


ディスプレイに飾られたブーケを指差し、尋ねると、店員は笑顔で花の説明をしてくれた。
どうやらこの花はブルースターというらしい。ミルキィブルーの花びらが星のように輝いて見えるからそんな名前がついたのだとか。ロマンチック好きな彼女にやはりお似合いの花かもしれない。
自分の直感が冴えすぎていて、クスッと笑いがでてしまった。
この花を贈ったら彼女は喜ぶだろうか。元々彼女が花好きだとは知っているけれど、付き合ってから今まで花をプレゼントしたことは一度もないかもしれない。単なる気まぐれということにして、プレゼントしてみよう。


「すみません、このブルースターでブーケ1つもらえますか?」


それに、白いバラも合わせて。
店員に告げ、さっそくブーケを作ってもらう。
ブルースターだけのブーケもいいけれど、もう一色入れたらもっと可愛いく仕上がりそうで。彼女に似合うもう一つ色、白を追加することにした。バラを選んだのは女性への贈り物に一番相応しい花だと思ったから。


「出来上がりました」


さほど時間もかからないうちにブーケは完成した。白と青の色合いがとても綺麗だ。


「このブーケ、結婚式で花嫁さんが持つブーケに使われることが多いんですよ」


会計の時に店員がちょっとした話をしてくれた。ブルーは花嫁の幸せの象徴の色でブーケ等に好まれやすい上に、ブルースターの花言葉は"幸福な愛""信じ合う心"。なるほどそれを聞けば結婚式のブーケに使われるのもわかる。


「結婚式…か」


純白のウェディングドレスに身をつつみ、手にはブルースターのブーケを持って、幸せそうに微笑む、彼女。もちろん、彼女の向かいにはタキシードを着た俺がいて……って俺は一体なにを考えているのだろう。
人前であるにも関わらず、すっかり緩んでしまった頬をぱしんと軽く叩いて現実へと戻る。(この一連の行為、店員にしっかり笑われてしまったけど)


「さて、帰るとしますか」


店員にお礼を言って贈り物のブーケを片手に店を出た。
こんなに早く帰る予定ではなかったけれど、ブーケを贈った時の彼女の反応が早く見たくて。自然と足も速くなる。
彼女は…ひめは、どんな顔をするだろうか。驚くだろうか、喜ぶだろうか、恥ずかしがるだろうか。


「まぁ、どんな顔でも可愛いんだけど、さ」


お惚気全開なのは十分承知。それくらい大好きで愛しているから。
気を抜いたら緩んでしまう頬を必死に引き締め、俺は足速に帰路に着いた。









Bouquet of the blue star
(青い星を束にして、愛と幸福を君に贈ろう)



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すてきな贈り物をくださったゆずさんに



20140518



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