寒いのは苦手だ。
朝方起きるのがキツイし身体を動かすのも億劫になるし。
忍者としてその寒さに慣れていかねばならないのだが。


「寒い。」


消灯時間。
私は彼女の部屋に忍びこんだ。体温の高いあいつの布団は、きっと温まっていることだろう。私はそれが目的だった。


「三郎?」


彼女はまだ起きていた。しかし、声に張りはなく瞳もトロンとしていて、眠りにつく寸前だったのかもしれない。少しだけ悪いことをしたと思ったが、それよりも私の頭を占めていたのは。


「寒い。」


寒さだった。
私はもう一度彼女に呟いた。こいつなら私の言葉に込められた真意を分かってくれるだろう。


「一緒に寝よう。三郎と寝たら暖かくなるから。」


やはり、分かってくれたか。
少しだけ布団を捲られ、私はすぐにそこへ身体を入れ込んだ。布団は温かかった。


「寒い、まだ。」

「それじゃあ、私を抱きしめて。私も寒いの。」


すぐ横で私を見つめる彼女。何もかもお見通しのようだ。
しかし、素直になれない私は「しかたない」と気だるそう言ってから、彼女を抱きしめた。自分から抱きしめたいと言うなどプライドが許さないから。


「三郎、まだ寒い?」

「……まだ少し。」

「もっとくっついていい?」

「好きにしろ。」


私の返事をきいてすぐに彼女は私に身体を寄せてきた。ぎゅうぎゅうとくっついて、そこから彼女の体温が伝わってくる。


「相変わらず体温が高いな。」


素直になれない私は暖かいとは言えないのだ。ありがとうも言えない。
けれど、彼女はそれは分かっていて。
あえて自分から求めるような言葉をつげるのだ。


「暖かいからいいじゃない。」


そうでしょ?
私の胸の中で微笑む彼女。
彼女は身体だけでなく笑顔も温かい。
ひねくれ者の私にはちょうどよい存在かもしれない。
素直になれない私を温かく包んでくれる彼女。


「まぁ、いい湯たんぽ代わりにはなるがな。」


本当はもっともっとくっついてたくさんの愛の言葉を紡いで彼女と愛を育んでいきたいのだけれど。
高すぎるプライドを崩すことはできなくて。
私は今日もつれない言葉を放つのだ。


「まだ寒い。」


さて、次に彼女は何をしてくれるだろう。私はそっと彼女の頬に手を添えた。
私は寒いのが苦手なのだ。だから。






君の熱で溶かしてくれないか?

(彼女と一緒に過ごせる冬は嫌いではない)



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元拍手
三郎は寒がりな気がします




20121109〜20130323



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