- ナノ -


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 僕も君のように世界中を旅したもんさ、とその翼竜は言った。もう旅には出ないのか、と竜。翼竜は目を細めて、空を見上げた。ここには、何より大切に思う相手がいる。僕の旅は終わったんだよ。
 仔竜とその母親の笑い合う声が、大樹の向こうから聞こえてくる。翼竜の横顔は、この上なく満ち足りていた。


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