- ナノ -


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 訪れたその村では、どの人間も悲しみに暮れていた。訳を聞くと、共に村で暮らしていた竜が死んでしまったらしい。皆に愛されていたのだな、と竜が言うと、ええ、それはもう、と村人は深く頷く。彼は畑仕事を手伝ってくれ、丈夫な鱗を分けてくれました。……食料がないときは、その肉までも。
 そこで、村人はぱっと顔を輝かせた。そうだ! あなた、この村の竜になりません? お断りだ、と竜は即答し、空に帰った。


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