Prologue
二〇〇七年、十二月十三日。
そう言われても、きっとあなたたちは何もぴんと来ないことでしょう。
けれどもこの日は、私にとってクリスマスより大みそかより、何よりも重要な日になりました。
私は、泣いていました。
日記を書きながら、そして書き終わってからも、こんなに泣いたことはないのではないだろうかと思うほど、泣きました。
テストでよくない点を取り、なぜ勉強するのか、その思いにますます追い詰められていたとき。
私はふと、何のために今まで自分が勉強していたのか知ってしまったのです。
それは、それまで私がいつも言っていたように、「自分に負けたくないから」というものではありませんでした。
そして、その他に私が立てるどんな理由も、自分が勉強していた理由とは違いました。
私は、人によく見られたいから、勉強していたのです。
勉強さえできれば、みんなに一目置かれます。「頭のいい人」だと思われれば、いてもいなくてもいい、そんな存在にはならないはずです。
しかし、その状態で逆に少しでも点が悪くなったら、もう見向きもされなくなってしまいます。勉強で居場所を確保していたとすれば、勉強ができなくなってしまうということは、そのまま居場所を失うことにつながるのです。
だから私は成績について心配し過ぎることも多かったし、悪い点を取ったら、過度に落ち込んでなかなか立ち直れないところがあったのです。それは悪い点を取ったということがショックだったというよりは、「人の目」が怖くて、とてもとても怖くて、常に気にしていたから引き起こされるものだったのでしょう。
点よりも自分よりも、「人の目」が怖かった。友達が、先生が、家族が、「どうしたの」という目で私を見るのが怖かった。
「人の目」のために勉強する……それがどんなに、「自分のためにならない」勉強であったことでしょう。
しかし、それに気づいたことだけが思わず泣いてしまった理由ではありませんでした。
私はなぜ自分が勉強していたのかを知ることによって、もうひとつの事実……何年も気付きたくなくて目をそらしていたものに気付いたのです。
そう、それは「夢」。
私が、小さなころから持ち続けてきた、「作家になる」という「夢」です。
お父さん お母さん
私はもう、過去と今だけに目を向けていてもいい時を終わらせなければなりません。
この大事な時期だからこそ、あなたたちに聞いてもらいたいことがあります。
きっと長くなることでしょう。
しかし、あなたたちのもとから離れてちょっとずつ自分の足で進んでいく前に、どうしても言っておかなければならないことなのです。
それは、小さな時に出会って、成長するたびにぶつかって、今やっと出すことのできた「ひとつの答え」なのですから。