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 山々の上を翔けていたときのことだった。薄桃色の花びらのようなものが、数枚、竜の視界を横切った。思わず目を凝らした竜を、次第に数を増やしながら、それらは包んでいく。まるで桜吹雪だ。
 とは言っても、まだ冬も終わり切らぬこの時期、それもこんな上空で桜が舞っているわけがない。竜がさらに目を凝らすと、なんとそれらは、花びらを纏ったような姿の小さな桜竜たちであった。春が来る少し前に彼らは現れる。そして、各地の桜を目覚めさせにいくらしい。
 竜はしばらくその場で静かに羽ばたき、桜竜たちを見送った。


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