- ナノ -


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 その氷竜の体は、まるでよく磨き上げられた水晶のように透き通っていた。日や月の光を受けて美しくきらめく姿は、この世のものとは思えないほどだ。
 ある人間の国の王が、氷竜を捕らえて連れ帰った。温暖な彼の国に着くと、氷竜はみるみるうちに溶け始め、太陽が沈む頃には大きな水溜まりしか残らなかった。
 王は怒って城に戻ったが、どこからきたのか、痩せた少女が現れて水を手に掬った。彼女は長い道のりを歩いて隙間風の吹き荒ぶ山小屋に帰った。彼女の手に残った僅かな水から、小さな小さな氷竜が現れた。
 少女と氷竜は、末永くお互いを支え合って生きたという。


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