- ナノ -


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 夜はやがて去り、必ず朝が来る。冬も永遠ではない。雪は溶け、草花が芽を出し、春が来る。……そんなこと、わかっちゃいるけどさ。俯きながら、彼は言った。それでも、朝が来ること、春が来ることを信じられなくなったりするんだ。
 そんなときはそれでもいいのではないか、と竜。夜も冬も、思ったほど悪くはないよ。素晴らしいこともある。
 竜は夜空を見上げた。誘われるように、彼も顔を上げる。冬の澄み切った空気が、無数の星を一段と煌めかせていた。


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