- ナノ -
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星のない夜空を飛んでいると、竜は時々、光さえ届かない深い海に潜っているような気持ちになった。竜は泳ぐことができず、海の中を見たこともない。だが、どこか懐かしい温もりを伴って、その感覚は竜の心に迫ってくるのだ。太古の昔、あらゆる生物は海で生まれたという。連綿と受け継がれる遺伝子の中に、いつかの記憶が刻まれているのだろうか。そう思うと、竜は微かな切なさを覚えた。
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