- ナノ -


373

 波、ってない? と彼女は言った。波が来てるときは、難しいこともするするっと上手く行くの。調子よく飛べるときを思い出しながら、あるかもしれないな、と竜は言った。彼女は頷く。その波に乗るように動くのか、波に関わらず一定の成果を出し続けられるよう動くのか、それってけっこう大切な点だと思うのよ。
 それで、どちらを選ぶのか。竜の問いに彼女は、もちろん両方、とあっさり言ってのけた。一定の成果を出しつつ波にも乗ってみせるわ、と笑う。数日後は竜医試験。臆さぬ彼女は、最後まで手を抜かない。


[