- ナノ -


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 ドラゴンさんとね、おはなばたけにいってね、おいしいおべんとたべてね、おそらをとんで、くもとおいかけっこしてね。楽しそうに、幼子は続ける。竜は深く頷くと、なおも話そうとする幼子へ語りかけた。わかった。わたしは待っているから、今は眠ろう。寝る時間だ。子は話し足りなさそうであったが、素直に受け入れた。ドラゴンさん、おきたらいっぱいあそぼうね。やくそくだよ。そう言うと、きらきら光る瞳を閉じる。
 竜はそっと、前脚で幼子を抱きしめた。日が暮れても、また太陽が昇っても、ずっと抱きしめていた。しかし幼子の瞳は、再び開くことはなかった。


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