- ナノ -


367

 もう何日も雨が止まない。こう降り続くと、体が鱗で覆われている竜であっても思うように空を飛べないものだ。この辺りは岩がちで、一息つけそうな木も見当たらなかった。竜が降り頻る雨の中でじっとしていると、ふいに、こっちこっちと誘う声が聞こえた。死角になっている場所に岩穴があったらしい。そこからひょっこりと、灰色の竜が顔を覗かせている。
 岩穴は思った以上の深さがあった。竜は感謝しつつ、雨が落ち着くまで、灰色の竜とその中で過ごした。


[