- ナノ -


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 夜の波間の暗がりから生まれた龍がいた。彼は、辺りが闇に包まれている時間にだけ動くことができた。ぼんやりと漂い、佇む。話す相手もなく龍が寂しさに暮れていると、波の音だけが響く夜の海に竜がやってきた。竜は自分の影の中に彼を入れてくれた。こうして彼は、竜の影に溶けこみ、明るい時間の世界を見ることができた。再び波間の暗がりに戻るまで、彼は竜と一緒に旅をしたという。


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