- ナノ -
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おまえさんは王宮仕えしたりしないのか、と男は言った。訓練や実働はだるいが、竜ならあれこれ世話を焼いてもらえるし、いいものも食えるぜ。竜は遠くに聳え立つ小山のような城を見遣り、飛んでいく先は自分で決めたいのだ、とだけ返す。男は、それは残念と言いつつも、笑っている。おまえさんの飛びすじが気に入ったから、一緒に仕えられたらと思ったんだが。ま、これからも元気でな。男の言葉に短い感謝を述べて、竜はその街を後にした。
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