- ナノ -


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 早くも青みを増してきた朝空に向かって、人間はうんと背伸びした。それを見て、竜も体を気持ちよさそうに伸ばす。ぐっと広げた翼で、朝日とまだ涼しさの残る風を受けた。なんか、いいなあと人間は笑った。羽で太陽と風、めいっぱい感じられるの、うらやましいや。
 竜は口の端でにやりと笑うと、翼をはためかせて空へ飛び出した。


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