- ナノ -


310

 竜は命を失うと、少しずつ自然に溶けていって、いつか完全に消えてしまうんだろ、と彼は言った。そうだ、と竜。彼は後ろを振り返る。そこにはこんもりと盛られた土が幾つもあった。彼が言うには、それらは竜たちの墓なのだそうだ。いつか消えるとわかっていても、街の人々と共に時を過ごした竜たちの亡骸を弔わずにはいられなかったのだという。
 竜塚には、今日も、手向けられた花が絶えない。


[ ]