- ナノ -
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難を逃れ、竜は、褐色の鱗を持つ竜と洞窟に隠れた。静まり返る暗闇の中で、褐色の竜がぽつりと呟いた。君は強いね。ぼくは、人が嫌いじゃないからこそ、もう見ていられないよ。竜ははっと顔を上げ、言った。去るのか。他の竜と共に。この地を。少しの間の後、褐色の竜は再び口を開いた。もうこれ以上、人間と戦いたくないんだ。たとえ人と、みんなと、もう会えなくなっても。止める言葉を、竜は持たなかった。翌日、彼は傷だらけの身体で、遥か西の彼方を目指して旅立っていった。
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