- ナノ -


254
 
 それはもしかすると、花のようなものなのかもしれません。彼女はそう言って微笑んだ。儚いけれども、強いもの。したたかに、咲こうとするもの。竜は彼女の差し出した一輪の花を、爪の先でそっと受け取った。精一杯にその花びらを開いている。手折られていても、なお。それが、人にとっての夢や希望というものなのか。竜の呟きに、彼女は頷く。ええ、きっと、と。


[ ]