- ナノ -


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 昔はこのあたりにもおまえさんみたいな竜がたくさんいたものだがなあ、と彼は言った。なかには畑仕事を手伝ってくれる者もいたよ。手ぬぐいで汗を拭きながら懐かしそうに目を細める。そんな彼に、竜たちへの敵意は微塵も感じられない。みな元気だとええなあ。彼の呟いたその言葉が、竜の胸にはいつまでもあたたかく残っていた。


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