- ナノ -
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ドラゴンさんったら、まだ眠ってるの。腰に手を当て彼女は言う。もう春だよ。たんぽぽもこんなに元気だよ。竜が薄目を開けてみれば、黄色い花が風にふわりと揺れていた。
それから多くの年月が過ぎ去った。木々の間で竜が長い微睡みからふと目を覚ましてみると、そこには一輪のたんぽぽが咲いていた。モウハルダヨ。どこかから聞こえた気がして、竜は胸に熱が灯るのを感じた。
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