- ナノ -


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 その飛竜は、あるときふらりと竜のいる人の街へやってきた。長く共に過ごした人間を失いうなだれる竜に、飛竜は言った。悲しいことだけど、竜だっていつかは死んじゃうんだ。それなら、生きているうちにいろんなところに行って、いろんな生きものに会って、いろんなことを考えてみたいって僕は思う。一瞬、竜は飛竜の瞳に暗い影を見た。しかし同時に、その影と向き合う真摯な意志も見た。飛竜は数日の後、またどこかへと飛び立った。竜は彼の背を見送りながら、心の中に言いようのない何かが静かに湧き上がるのを感じていた。


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